米国と中国を中心とした世界経済の構造変化がもたらす新たな投資機会について、7月23日の本コラム(「東アジア経済圏の担い手となる中国」)で考察した。

 その際に、金融危機の後遺症が残る欧米に比べ、新興国経済は相対的に堅調、中でも中国を中心に、日本、韓国、ASEANを含む東アジア経済圏が今後の世界経済の牽引役となる可能性が高い点を指摘した。今回は、実際の新興国投資に際して留意しなければならない点につき考えてみたい。

下落幅も大きいが、回復も早い新興国市場

 新興国株式市場の値動きの特徴は3点だ。

 第1に、ハイリスクハイリターンである。成長ポテンシャルが高い新興国株式市場の期待リターンは先進国より高いものの、ボラティリティもまた高くなる。典型的な例がリーマン・ショック後のここ1年の動きだ。

 危機直後、多くの新興国株価の下落幅は先進国より大きかった。しかし、3月以降の回復局面では、高い成長への期待から新興国株が先行して買われた。

 リーマン・ショック直前の2008年8月末~2009年8月末までの1年間を、各市場が安値をつけた日で区切って、前半の下落局面と後半の回復局面の騰落率を見てみよう。

 日米欧の主要先進国市場は3月上旬の安値までほぼ40%下落後、40~50%上昇した(通年では20%弱下落)。これに対して、ロシアは約70%下落後、110%上昇(同35%下落)、ベトナムは約60%下落後、130%上昇(同ほぼ横ばい)となった。

 一方、ブラジル、韓国は先進国に先駆けて10月下旬に安値をつけ(下げ幅40%前後)、回復局面では先進国を上回る70~90%の上昇となった

投資家のリスク許容度がカギに

 第2の特徴は、各国企業の業績見通しよりもグローバルな投資家のリスク許容度に左右される度合いが大きいことだ。

 今回の金融危機のような未知の事態に遭遇して投資家のリスク許容度が低下すれば、リスク量の大きい資産から売却圧力が強まることになる。

 逆に言えば、グローバル経済が巡航速度で推移し、マクロ環境の不確実性が低い時期には新興国株式は買われやすい傾向がある。

 新興国投資に際しては、経済の不均衡や地政学的リスクの存在など、不確実性の高まりに繋がる要素について考慮しておく必要がある。