関西国際空港を拠点にする格安航空会社(LCC)の「Peach Aviation(ピーチ・アビエーション)」が客室乗務員(CA)1期生の公募を行ったところ、倍率は約21倍にもなった。約90人の募集に対して1909人が応募したのだ。CA人気は健在のようだ。

 この募集で興味を惹いたのは、副業や通学も認めるという条件である。実際には募集要項に明記したわけではなく、様々な勤務形態が可能となる組織を目指す中で副業も検討されるという同社の方針を、マスコミが「副業」をクローズアップして伝えたものだ。とはいえ、マスコミ報道を同社は全面的に否定もしていない。

 同社は2012年3月から新千歳、福岡線を就航させる予定だが、いずれは学生だったり、常務しない日にはコンビニで働いたりしているCAが乗り込んでいることになるかもしれないのだ。

 もっとも、学生ならアルバイト感覚でいいのかもしれないが、ピーチ・アビエーションとの兼業を認める企業があるのかどうか首を傾げざるをえない。日本的慣習でいけば、「正社員」のかけもちは許されないからだ。

副業の許可は従業員の生活を守るため?

 2009年1月に三菱自動車工業の水島製作所が生産などに携わる技能系社員約60人に副業を許可し、うち約40人が実際に軽作業のアルバイトをしていたことが分かり、大きな話題になった。正社員がアルバイトをするなど考えられないことだったし、多くの企業では副業を禁じてもいたからだ。三菱自動車も就業規則で社員の副業を原則禁止していた。

 にもかかわらず、水島制作所の社員はアルバイトをしていたのだ。しかも、それを水島製作所としては認めていた。

 ついに企業が社員の副業を認める時代が来た、とマスコミは騒いだ。わたしも、その中の1人だった。

 しかし取材してみれば、社員の副業を認める判断は水島製作所が独自にやったもので、三菱自動車本体は原則どおり「副業禁止」を強調したものだ。「今後も原則として許可するつもりはない」と、広報担当者はわたしの取材に断言もした。

 水島製作所の社員がアルバイトをしていたのは、生産調整で賃金が15%カットされたためである。2008年9月にアメリカの大手投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が経営破綻したことをきっかけに世界中を不況が襲った。リーマン・ショックである。