米国の時代が終わったという声がよく聞かれる。その節目となったのは、政治的にはイラク戦争だとすれば、経済的には今回の金融危機であろう。米国が終わったという判断は時期尚早かもしれないが、今回の金融危機の破壊力は巨大な台風にも匹敵する。世界の光景は、これまでとはまったく違うものになるだろう。

 今回の金融危機は日ロ関係にどのような影響を与えるのだろうか。領土問題を抱えている両国を接近させるのか、それとも引き離すのか。今回はその問題について考えてみたい。

エネルギー依存の体質が明らかに

 まず、経済面である。ロシアも日本も株式市場は大きな打撃を被った。原油と天然ガス価格も下落したが、それに対する日ロの反応は正反対だ。価格の下落は日本にとっては好ましいことであるが、ロシアにとっては致命的なダメージとなる可能性がある。

 10月29日、ロシアの経済開発省は2009年度の経済成長予測を下方修正した。従来は原油1バレルあたり95ドルの推定で目論見を立てていたが、実際の石油価格は60~70ドルとはるかに下回っている。この下落によってロシアは財政赤字となり、ことによってはGDP(国内総生産)が伸び悩む恐れもある。

 ただし、ロシア経済が失墜するという推測は早すぎる。まだ余裕は十分にある。例えば外貨準備高は8月から急激に縮小しているが、10月にロシア中央銀行はこの先1年で準備高は14.8%増大するという公式予測を発表している。

 今回の金融破綻で、ロシアはエネルギー資源に過度に依存しているという問題点が浮き彫りになった。ロシアは今後、先端技術の開発に積極的に乗り出すようになるはずだ。あらゆる領域でロシアは日本の技術を積極的に取り入れようとするだろう。この点は日ロ関係を構築するうえでの求心力になると思う。

 日ロ経済関係はこれまで急速に発展してきた。大きな問題が起きる可能性は低い。むしろ、シベリア鉄道整備みたいな大規模な計画が、さらに重要度を増し、両国の関係を緊密に結びつけるはずだ。こうした実体経済のプロジェクトはロシアと日本に新しい需要と雇用を生み出すことにもなる。予算の面でも問題なく遂行されるだろう。