つまり残りの約8億5000万人はインターネットを利用しておらず、テレビも新聞も報じないので知ることはない。広大な中国、政治に関心のある北京人以外は、政治よりも地元の省のニュースに興味を持つ。

外国ニュースにアクセスする人はごく一部

建党90周年アピールばかりが目立つ上海の地下鉄駅

 ではインターネット利用者はどうかというと、大多数の利用者はポータルサイトのトップページや、チャットソフトと連動で起動する「話題のニュース」を見る程度で、そうしたサイトでは報道規制を遵守することから、インターネット利用者が気づく機会はない。

 外国のニュースサイトにアクセスする人は少数だし、ましてやアクセスできないツイッター(twitter)やフェイスブック(Facebook)にゴリ押しでアクセスして情報を得ようとする人はさらに少数である。

 最近中国のネットではツイッター似のミニブログ「微博」が利用者2億人近くに達しトレンドではあるが、同じ趣味を持つ人がフォローし合ったり著名人をフォローするだけなので、重大事件に気づく機会はそうそうない。

 「中国政府への不満と行動力がなければ、重大事件を知ることはない」と書いたのには、そうした背景がある。

 「ガラケーでとりあえずYahoo!ニュースにアクセスして、モバゲーやグリーで遊ぶ」スタイルの日本人が多いことを考えれば、「様々な事件事故発生後、多くの中国人がネットを介して知り怒る」というストーリーが過度な期待を含んでいるのも理解できよう。

鉄道事故はネット上で討論が続いている

長期間にわたり不動の人気のアップルストア

 ところが国威発揚に傷がついた中国高速鉄道事故は中国全土で報じられ、全土で考え、ネットではネット利用者らにより討論されている。

 広い中国、遠い他省で暴動が起きようが過去のリーダーが病床に伏そうが他人事に捉えられる多くの中国人にとっても、中国全土に拡がる高速鉄道網で起きた大事故とその後のずさんな処理は「明日は我が身」になりかねない身近な話題である。

 テレビや新聞やポータルサイトが事件を見やすい場所で紹介したことで多くの人が興味を持ったのも、情報拡散を後押しした。

 従来の事件事故のケースにおいては、事件事故を知る人が局所的な中で、前述の通り地域的ないしサービス単位で情報封鎖すればよかった。ところが中国高速鉄道事故においては、中国全土誰もが知るケースとなった。