自民党の歴史的惨敗、そして民主党への政権交代となった衆院選ですっかりかすんでしまった感もありますが、裁判員制度、始まっています。
法曹関係者からは「酒井法子にケチつけられた」の声
第1号となる殺人事件の裁判が東京地裁で行われたのは8月3日から4日間、翌週10日から3日間はさいたま地裁で殺人未遂事件の裁判、そして衆院選後の9月2日から青森地裁で強盗強姦事件などの裁判がありましたね。
そう言えば、衆院選以外にも、裁判員裁判の話題をさらうような事件がありました。「のりピー」ことタレント、酒井法子の覚醒剤事件です。折しも第1号の裁判が始まる3日未明に夫が逮捕されて幕開け、本人の失踪、逮捕状、逮捕・・・と2件目の裁判期間中も話題は満載でした。
法曹関係者も「よりにもよって酒井法子に食われた・・・」と嘆いていました。何しろ、ご承知の通り、のりピーが最高裁の裁判員制度PRビデオに主演していたからで、“身内” にケチをつけられたといった思いもあったでしょう。
そんなこんなの裁判員裁判のスタートですが、法曹関係者にこれまでの感想を聞いてみると、「うまくいきすぎて(これから何かあるのではと)心配になる」ほど、上々の評価でした。
確かに、裁判員たちは制度が予定した通り、あるいはそれ以上の役割を果たしていました。呼出状に95%もの候補者が応じたというのも、うれしい「想定外」だったようです。
また、東京地裁の裁判では、3日目に裁判員が病気のため補充裁判員と交代したり、さいたま地裁では、判決後の裁判員の会見で「守秘義務」に絡んで、地裁職員が裁判員の発言を許可しなかったり、制度のシステムをシミュレーションするかのような場面も見られ、まさに裁判員裁判の手本のようでした。
法曹関係者が驚いていたものの1つが報道でした。中でも第1号裁判で注目されたのが裁判員の初質問。市民が参加する裁判員裁判の法廷で、初めて裁判員の生の声が出るのが証人や被告人への質問だからです。
裁判長との再三にわたる打ち合わせで質問が出ない?
それだけに初日、2日目の午前になっても第一声が出なかった時は、メディア側に「まだ出ない」と焦れるようなムードさえ漂い、2日目午前にあった法務大臣の定例会見でも「まだ裁判員からの質問が出ませんが」という質問が出たほど。
裁判員が質問できるタイミングになると裁判長が再三「打ち合わせ」として裁判員とともに退廷していたことから、こうした訴訟指揮が裁判員の質問を阻んでいるのではないか・・・と腹立ち紛れのようなテレビ解(怪?)説さえ聞こえました。
結局、2日目の午後に女性裁判員が被害者遺族に対して質問し、3日目には6人全員の裁判員が被告人に質問、それも「法律家ではしないような」(弁護側)疑問をぶつけ、裁判員制度の面目躍如となりました。
ただ、いくつか考えさせられた問題もあります。1つは弁護士による「求刑」です。いずれの裁判も、犯行に争いはなく、焦点は量刑でした。