6月29日 埼玉県さいたま市で、乗用車にはねられた38歳の女性が近隣の12病院から受け入れを「断られた」ため、搬送に2時間半かかり、翌日、骨盤骨折による出血性ショックで死亡しました。

 救命可能だったかもしれない命が救えず、まして、2時間以上何の処置も受けることができなかったというのは、やりきれない気持ちになります。

 7月14日には、県中央地域メディカルコントロール協議会が検証結果を公表し、「(医師不足による)医療機関の受け入れ態勢、収容先を決める救急内部の連絡が不十分で、搬送に時間がかかり、死亡の可能性が高まった」と結論づけました。

 今後は、救急搬送時に手間取った際の手順を明文化し、市内24カ所の2次救急医療機関に対して、専門外でも一時的に収容してもらうよう依頼する方針とのことです。

 これは、確かに現実的な解決策ではあります。しかし、今回の場合、事故後2時間で意識不明のショック状態に陥っていたのです。外科医、整形外科医、そして放射線科医が常駐し、なおかつ、緊急手術ができる設備を備えた3次救急医療機関に即座に搬送されなければ救命困難であったと思われます。

 専門外の医師が当直している2次救急病院に「一時的に」収容することは、「搬送に時間がかかった」、または「何の処置も受けられなかった」という批判をかわすことはできるかもしれません。

 しかし、2次救急病院に一時的に収容したところで、一番大事な救急患者さんの救命には必ずしもつながらないのです。

人口100万人あたり1カ所しかない3次救急医療機関

 ここで、現状の日本の救急医療を支えている1次救急医療機関と2次救急医療機関、3次救急医療機関の関係について整理しておきましょう。