2008年9月に米リーマン・ブラザーズが破綻してから、間もなく1年になる。現在までのところ、世界経済は金融システムの動揺と実体経済の急激な落ち込みのショックから、予想を上回るスピードで立ち直りつつある。

各国の中央銀行、金融市場対策を相次いで発表 ECBは300億ユーロ供給

破綻から間もなく1年〔AFPBB News

 4-6月期の実質GDP成長率は米国が▲1.0%と小幅のマイナスに留まり、立ち直りが遅いと見られていたユーロ圏でも▲0.4%と予想外の健闘を見せている。日本は輸出が持ち直し3.7%の急回復となった。米国も、7-9月期でのプラス成長復帰がほぼ確実視されている。

 株式市場も、米欧、日本ともに3月上旬の安値から8月20日時点で約4割の回復を果たした。世界経済は危機を脱したのだろうか。今後も、経済・市場の回復が持続していくための条件について考えてみたい。

二番底をつけずに持ちこたえた株式市場

 4月に米国出張した際のエコノミストやストラテジストとの意見交換を踏まえ、本欄で「パニックは終わったが・・・」(4月28日公開)を書いた。その際、株式市場が二番底をつけるリスクを2点指摘した。

 1つは、4月時点でエコノミストたちのコンセンサスとなっていた「米国は年央からのプラス成長復帰見通し」が裏切られること。もう1つは、米国長期金利の急上昇である。

 実際に、7月初旬に発表された米雇用統計の悪化は、景気回復の遅れを想起させ、株価の調整をもたらすこととなった。6月上旬には、財政赤字拡大による債券需給悪化懸念が高まり、10年債金利が4%まで急騰して市場を揺さぶった。

4-6月期の実質GDP、5四半期ぶりにプラス

日本経済に活気は戻りつつあるのか? 4-6月期のGDPは5・四半期ぶりにプラス成長に転じた〔AFPBB News

 しかし、2つの負のインパクトを併せても、米国株式市場は6月上旬から7月上旬まで7~8%の下げで耐えしのいだのだ。

 その後、日米欧の企業センチメントの一段の改善が景気底入れ観測をより確かなものとし、株価調整が軽度に留まったことが投資家のリスク・アペタイト回復の流れを復活させ、各国の株式市場は調整後軒並み2桁の上伸となった。

 アグレッシブな金融財政政策総動員の副作用とも言える第一波の試練に対して、市場はひとまず抵抗力を示して跳ね返したと考えてよい。