米国のオバマ政権が打ち出したいわゆるグリーンニューディール政策は、温暖化防止・低炭素社会づくりのための社会資本整備と景気回復の両方を狙っているが、その中でも「スマートグリッド」が話題を呼んでいる。

 スマートグリッドとは、情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)や先端技術を活用した効率的で信頼性の高い次世代の電力網(グリッド)を作ることだ。電力線通信により電力の需給情報をリアルタイムで収集分析、配電の最適化によりエネルギーの無駄を抑制する狙いがある。

米フロリダ州の大規模停電、数時間で復旧

配電網が脆弱な米国では大規模な停電も珍しくない(停電中の交差点で交通整理する警察官 08年2月フロリダ州マイアミ)〔AFPBB News

 もともと、米国は、小規模な電力事業者が多いことに加え、自由化の影響で送配電ネットワーク設備投資額が低く抑えられているため、電力会社同士の連携の悪さや老朽化から大停電が発生したり、その復旧に長時間を要するなどの問題を抱えていた。

 こうした問題を解決しようと、スマートグリッド関連の研究プロジェクトが2000年にスタート。2003年8月の北米大停電の1カ月前に、米エネルギー省は「Grid2030」という送配電網の近代化に関するリポートを発表した(PDF)。

 2005年のエネルギー政策法には、各州に対してアドバンストメータリング(先進的計量)や需要反応の検討を義務化するなど、スマートグリッド関連の条項が盛り込まれていた。2007年12月にはスマートグリッド関連の投資資金補助や試験プロジェクトの予算に1億ドルを拠出することを法律で決めていたが、なかなか具体化が進んではいなかった。

オバマ次期大統領の大規模景気対策、省エネ対策などに大規模投資

景気対策の柱の1つとして省エネ投資を打ち出した〔AFPBB News

 そこにオバマ大統領が登場した。今年2月には、「米国再生・再投資法」(American Recovery and Reinvestment Act, ARRA)の中でスマートグリッドに対して45億ドルの予算が計上されるなど、急速に現実のものとなって注目度を上げている。

 スマートグリッドを導入すれば、ICTを活用することで、電力会社は、変電所にあるセンサーや埋め込み型ルーターを使って、電気需要に関する情報をリアルタイムで発電機に送信し、発電量を調整し、より能率的な稼働が可能になる。調整の過程で風力や太陽光発電を上手く利用すれば、化石燃料による発電を減らすことも可能となる。

 将来的には、家庭にある電気製品に搭載したセンサーで、消費者が詳細な電力消費情報にアクセスできるようになれば、電力消費を抑制するインセンティブになる。電力会社はピーク時における配電網への負担を軽減できるわけだ。