今年1月ラスベガスで行われた家電展示会CESで、スマートテレビが大々的に紹介されてから、半年が経った。あれから、バルセロナ、ニューヨーク、ラスベガス、ロンドン、シカゴと旅の先々で、人々と意見交換し、街を歩き、メディアに触れてきた。

英国のフリービューアンテナ

 その中で感じたのは、社会全体が政治や経済といった枠組みや、供給側の論理ではなく、消費者側の視点に向き合わざるを得なくなっている点だ。

 我々は消費者、有権者、納税者、生産者、販売者、消費者と様々な顔を持つが、そのどの顔の時でも、サービスの受け手側の視点が必要となろう。

 こうした視点は誰もが、社会人3年目くらいまでは持っているが、次第に大人の論理に染まっていく。しかし、いまインターネットの普及をきっかけに問われているのは、こうした大人の論理では答えが出ない本質的で先鋭化したものである。

 テレビメディアの世界に目を投じれば、ユーザーがテレビを買うのは、テレビメーカー、メディア、コンテンツのどれが好きなのか、全部なのか、といった問いかけや、ではメディアがコンテンツを届けるのは、ハード機械なのか、ユーザーなのか、といった問いかけになろう。

 こうした問いかけは、メディアだけでなくあらゆる産業、政治、社会にまでそのアナロジーの範囲を広げることができよう。

 今回は、そのスマートテレビの動向を手始めに、メディアの今後を論じてみたい。まずは、現在の状況を数字で把握したい。

スマートテレビの売れ行きは、どうなのか?

 米国の家電業界の団体CEA(Consumer Electronic Association)が2011年1月に発表した統計では、米国で2011年から2014年までに販売されるテレビのうち、4万8600万台がインターネット接続可能なテレビになるという。

 米国全体のテレビ販売のうち、インターネット接続テレビが占める割合は、2011年の15%から2014年には50%以上になると予想している。

 また、ディスプレイサーチは、2010年に全世界で販売されたテレビの20%がインターネット接続可能であり、2014年には全世界で1億2000万台のネット接続テレビが販売されるという(2011年4月25日リリース)。

 同社が世界14カ国でテレビ購入の動機を、薄型液晶テレビ、ネット接続機能、3D機能の3点から調査をしたところ、インターネット接続機能が1位となった国はフランスだけで、この3点が動機づけになった国は、ひいき目にみても中国くらいとなっている(2011年6月8日リリース)。