韓国のハイニックス半導体の債権団(正式には出資転換株式共同管理協議会)は2011年6月21日、保有する同社株の売却手続きを始めると発表した。

 今のところ買収に意欲を見せているのは造船大手の現代重工業だけと見られるが、すんなり売却手続きが進むかは不透明だ。ここ数年、現代自動車や現代重工業が、旧現代グループ企業を買い戻す例が相次いでおり、「現代系企業に対する優遇策」との批判があるからだ。

 ハイニックスの売却は、李明博(イ・ミョンバク)政権の任期とも絡んで、政治問題化する恐れもある。

 ハイニックス債権団の発表によると、2011年7月8日までハイニックスの売却入札への参加意向書を受け付け、8月初めに優先交渉者を選定する。

サムスンに次ぐシェアを誇る超優良企業

東芝、半導体特許係争でハイニックスと和解 - 韓国

銀行管理下に置かれたハイニックスは見事な復活を遂げている(写真は2004年当時のハイニックスのメモリーチップ)〔AFPBB News

 ハイニックスの足元の業績は好調だ。2010年12月期の連結決算は売上高が12兆4041億ウォン(1円=13ウォン)、営業利益は3兆2731億ウォンで、営業利益は過去最高。営業利益率は26%に達した。

 台湾の調査会社DRAMエクスチェンジによると、2011年1~3月期の世界のDRAM市場でのシェアは22.9%で、サムスン電子(39.8%)に次ぐ2位。3位のエルピーダメモリ(13.5%)との大きな差を維持している。

 こんな超優良企業が売りに出されるとは一体どういうことか。ここでちょっとハイニックスの歴史を振り返りたい。

 ハイニックスの前身は1983年設立の現代電子産業だ。当時、韓国最大の財閥だった現代グループが、半導体やコンピューター関連のいわゆるハイテク事業進出を狙って設立した。それなりに成長したが、大きな転換期となったのがIMF危機と呼ばれた、通貨金融危機が韓国を直撃した1990年代末だ。

 金大中(キム・デジュン)政権は、産業再生のために財閥の事業を再編する「ビッグディール」政策を打ち出し、1999年に半ば強制的にLGグループから半導体事業(LG半導体)を取り上げ、現代電子に吸収合併させた。