6月13日、3週間近い協議の末、ようやく北朝鮮が5月25日に実施した2度目の核実験に対する国連安全保障理事会の制裁決議が採択された。
しかし、この決議による制裁の効果となると、不透明と言わざるを得ない。なぜなら、それはひとえに中国の対応にかかっているからである。過去の制裁がほとんど「シリ抜け」に終わってきたのは、中国が制裁履行に不熱心だったからに他ならない。
「義務化」が「要請」にトーンダウン
今回の決議の「目玉」は北朝鮮の船舶の貨物検査実施であり、各国にその履行が「要請」されることとなった。
しかし、日米の提案は履行の「義務化」であった。それが「要請」にトーンダウンしたのは中国の強い抵抗があったからである。中国はなぜ、かくも北朝鮮への「制裁」に及び腰なのか。それはどの国もいぶかるところだ。
衆目が一致する見方に、「北朝鮮に最も大きな影響力を持つのは中国だ」というものがある。事実、中国の食糧・エネルギー供与がなければ、北朝鮮は立ち行かなくなる。いわば中国が北朝鮮の国家としての生命線を握っていると言っても過言ではない。
そうだとすれば、北朝鮮の傍若無人な核・ミサイル開発に対し、本来持っている影響力を行使せず、制裁にも不熱心なのにはいくつかの理由があるはずだ。
北朝鮮を潰したくない5つの理由
その理由として第1に挙げられるオーソドックスな説明は、中国と北朝鮮の特殊な歴史的関係である。朝鮮戦争で共に米軍と戦い、「血で固められた友誼」を結んだことから、現在でも国と国というよりは中国共産党と朝鮮労働党との関係が濃い。実際に、中国で北朝鮮マターを扱うのは、外交部ではなく中国共産党の対外連絡部であると言ってもよい。
中国が特別待遇をしてきたのが北朝鮮だった。冷戦時代に北朝鮮が、対立する米中間の「緩衝国家」としての役割を果たしてきたことも大きい。
第2に、中国が掲げる外交原則がある。現在の胡錦濤体制は「善隣友好外交」を重視している。つまり、国境を接した国と敵対関係ないし対抗関係になることを望まず、隣国の不安定化はさらに望まない、ということである。
そして第3に、中国が厳しく制裁したところで、金正日が言うことを聞くわけではない、ということがある。大国への従属(事大)を排する主体(チュチェ)思想の国であれば当然で、その意味で中国の影響力にはおのずと限界があるということになる。
第4に、中国が議長国を務める6カ国協議に、北朝鮮を引き止めておきたいという理由である。そのために制裁のレベルを引き下げ、北朝鮮を必要以上に追い詰めない、ということだ。
北朝鮮の核問題は「外交的に交渉で解決すべきだ」というのが6カ国協議に参加する北朝鮮以外のメンバーの総意である。議長国たる中国がその総意に従えば、北朝鮮を交渉の場から追い出すようなことはできない、ということになる。