大荒れとなった2009年3月期連結決算。よもやの赤字に転落したトヨタ自動車に代わり、「日本一儲けた会社」の座に就いたのはNTTだ。本業の儲けを示す営業利益は前期比14.9%減らしたが、それでも1兆1098億円を確保。過去数年、その背中ばかりを見せつけられてきたライバル企業の脱落により、「称号」が6年ぶりにNTTへ転がり込んだ。
だが、NTTに喜びはない。力尽くでトヨタを捻じ伏せ、「称号」をもぎ取ったという感じが更々ないからだろう。三浦惺社長は「営業利益1位は相対的なもの。厳しい経済状況を踏まえ、気を引き締めて(今後の事業活動に)取り組む」と述べ、居心地の悪さにただただ戸惑うばかりだ。
そもそも通信産業は「不況に強い」と言われ、どんな事態になろうとそこそこの結果をコンスタントに残す。2009年3月期についてもそうだった。
「100年に1度」と言われる不況の影響が、全くなかったわけではない。加えて、固定電話契約者の減少などによる通信料収入減というマイナス要因も継続したが、傘下のNTTドコモがいつものように利益の大半を稼ぎ出し、その結果いつものように1兆円を超える営業利益を記録した。
特別なことは何もしていない。トヨタはじめ輸出型企業の落ち込みがあまりに大きく、思いがけず目立ってしまっただけ。他を圧倒する絶対的な勢いがあるわけではない。これが日本を代表する「通信の巨人」の現実だ。
竹中氏「完全分割」案、与党反発で問題先送り
NTTに対しては、2010年に再び「再々編」論議が待ち構えている。前回、この問題が政府・与党で議論の俎上に載せられたのは、2006年のことだ。
急進派である竹中平蔵総務相(当時)は将来のあるべき姿としてNTT持ち株会社を廃止し、グループ会社との資本関係を分離する「完全分割」案を主張した。
これに対し、与党が「国際競争力の低下を招く」などと猛反発。双方譲らぬ議論は結局、「2010年の時点で(NTT再々編の)検討を行う」という、結論先送りでとりあえず決着させるしかなかった。
今回も「検討した結果、また先送り」という可能性が全くないわけではない。だが、「勢い」を失っているように見えるNTTのこれからを考えれば、何らかの変化が必要であり、やはりしっかりとした結論を来年は政府・与党が示すべきだろう。