ゴールデンウイークを日本で過ごしてモスクワに戻った私が、まず気づいたのがモスクワのスーパーマーケットの異変だった。わずか10日あまり留守にしただけなのに、棚割りが大きく変化していたのだ。
激変するモスクワのスーパーマーケット
ロシアを離れる際、冷蔵庫を空っぽにしていたので、まずは朝食の食材を求めようと、ジュースやバナナ、ヨーグルトなどを陳列する棚の前に行った。
ところが、私が買いたいジュースが以前あったはずの所に見当たらない。棚には今まで見たこともない銘柄がずらりと並んでいた。
普段、私は「J-7」とか「Ya(Я)」といったブランドを1本50ルーブル(1ルーブルは約3円)前後で購入していた。それが見つからない。棚を下から上まで念入りにチェックすると、わずかな数だけ最上段に近い所に申し訳なさそうに陳列されていた。
明らかに売れ筋商品としての扱いではなくなっている。それに代わって目の高さにある棚には、「TONUS」とか「Dr.FRESH」などという、私が今までに見たことのない商品が広く並べられていた。さらにその下の次に売れ筋商品を並べる棚には、「DA!」とか「Maya Semiya」といった、これまた私の知らない徳用の1.5リットル入りボックスが並んでいた。
欲しいジュースは50ルーブルから70ルーブルへ大幅値上げ
しかも、最上段の「J-7」ブランドのオレンジジュースは、20ルーブルも値上げされ70ルーブルの値札がついていた。売れ筋の50ルーブル圏内にはTONUSが入り、さらに経済的な商品として最下段の棚には「Frustyle」などという聞いたこともないブランドが陳列されている。
ジュースについてくどくど書いてきたが、それには理由がある。実は、ジュースにおける価格階層化は、ロシア経済のケーススタディーに使われるほどはっきりしているのだ。
ジュース業界は、下からエコノミー、ミドル、ハイ、プレミアム、スーパープレミアムと5つのセグメントに分け、価格はエコノミーの20ルーブル近辺から90ルーブル台のスーパープレミアムまでかなり厳密に価格階層が形成されている。
ロシア経済は、ジュースに典型的に表れているように、はっきりとした格付けが様々なところに見られるのが特徴だ。