世界中が固唾をのんで見守る中、米国のストレステスト(特別検査)が終わった。米政府・連邦準備制度理事会(FRB)が対象とした大手金融機関19社のうち、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)など10社は景気が一段と悪化した場合の資本不足を指摘され、11月までの増資を義務付けられた。

景気悪化に備えた「資本緩衝」を、米銀ストレステストでFRB

「全行健全」にお墨付きを与えたFRB〔AFPBB News

 裏を返せば「現状においては、全社とも資本力健全」とのお墨付きをもらったことになる。政府・FRBはあらゆる場面で「大手金融機関は潰さない」と強調しており、当局自身が企画し、導き出した検査結果は、最初から結論ありきの茶番だった。

 「投資家と社会に相当の安心をもたらす」――。ストレステストの結果公表後、FRBのバーナンキ議長は記者会見に臨み、その意義を強調した。資本増強を要請した金融機関の資金調達がまだ済んでいないにもかかわらず、だ。

 検査で指摘された資本の不足額は決して小さくない。339億ドル(3兆3500億円)の資本増強を迫られたバンカメに続き、米銀4位ウェルズ・ファーゴ137億ドル、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の金融関連会社GMAC115億ドル、シティグループ55億ドル、モルガン・スタンレー18億ドルなど・・・。総額は746億ドル(7兆3500億円)に上る。

 昨秋の金融危機の痛手から、市場が完全に立ち直っていないことを考えれば、「簡単に調達できるとは思えない額」(邦銀エコノミスト)である。しかし、検査結果公表直前の7日、ウェルズとモルガンが普通株発行を正式に表明すると「買い手が殺到」(モルガン広報)した。盛況に乗じて、ウェルズはその後24時間以内に2度も調達予定額を引き上げて86億ドル超を確保した。モルガンは、提携先の三菱UFJフィナンシャル・グループによる引き受け協力もあって、40億ドル増資を決定。当局からの要請をさっさとクリアしてしまった。

リークされた検査結果

 なぜ、投資家は、かくも楽観的なのか。大きな要因の1つは、ストレステストの結果が、極めて巧妙に事前に漏れ続けていたことにある。

 米自動車大手クライスラーは、米政府が設定した4月30日の新再建計画取りまとめ期限を守れず、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請に追い込まれた。だが、同社が非上場で、債権者も限定的だった上、事前に破綻観測が強まっていたことから、市場の反応は極めて冷静だった。

 その動きを確認したかのように始まったのが、ストレステスト結果に関する報道だ。翌5月1日夜にはウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)が「シティグループの資本不足は100億ドル」と速報。3日にはニューヨーク・タイムズ紙が「検査結果はごく一部の金融機関に追加資金が必要であることを示すだけ」と続いた。

 さらにWSJは4日に、「増資が必要なのは約10社」とほぼ正確な前打ち報道を披露した。結果公表前日の6日に「バンカメは340億ドル規模の資本不足を指摘される」とだめ押し。発表当日の紙面には、「金融機関別資本不足額一覧表」まで掲載し、さながら官報のような役割を果たした。