東南アジアでの影響力再び、EUとTPP連携で米国牽制も
——こうした変化の中で、日本企業はどうしたらいいですか。
羽生田:企業は、政府が進める「危機管理投資」に積極的に提案をしていくべきです。宇宙、量子コンピューター、核融合など、採算化まで距離のある分野こそ企業が積極的に入っていく必要があります。
その際のキーワードは「市場創出」です。日本企業はこれまで「競争戦略」に意識が偏り、「コストリーダーシップ」と「差別化」というフレームだけで戦ってきました。しかし、それは既存市場の奪い合いに過ぎません。これから重要なのは、まだ存在しない市場を立ち上げることです。
高市早苗首相(写真:ロイター/アフロ)
——日本企業にとって今後、重要となるのはどのような地域との連携でしょうか。
羽生田:東南アジアでの日本への期待が根強く、引き続き連携を深めるべきだと思います。
現在、中国企業の対ASEAN(東南アジア諸国連合)投資が変化する兆しがあります。トランプ政権が迂回輸出(ASEAN経由の米国輸出)や中国企業による第三国からの輸出に強く反発しているため、中国企業がASEANに投資しづらくなるでしょう。するとASEANは「もともと関係の深かった日本に投資してほしい」という方向に戻ってきます。ここは日本にとって大きな投資チャンスでもあります。
さらに、もう一つ重要なのがEUとの関係です。
日本が最も国際ルール作りで存在感を発揮できる場はTPP(環太平洋パートナーシップ)です。アメリカには離脱されましたが、将来的にTPPとEUが連携するような枠組みができれば、アメリカも無視できなくなるでしょう。日本にとって非常に重要な国際的アジェンダになります。
