春爛漫・・・。
首相・麻生太郎にとって、心地よい風が吹き始めている。民主党代表・小沢一郎の続投に加え、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射が麻生政権に「追い風」となり、内閣支持率も回復基調にある。一方、民主党内の大多数が「小沢続投では、選挙は厳しい」と思いながらも、声を潜めたままで動けず、「5月解散説」に危機感を強めている。(敬称略)
「来る7月の東京都議選、並びに近々行われるであろう衆議院総選挙に、自民党に熱烈なご支援をいただいている皆さん方、こんなに大勢お集まりいただき、誠にありがとうございました」
4月6日夜、自民党東京都連主催の政経フォーラムで、麻生が「近々行われるであろう総選挙」と明言したから、会場は大きくどよめき、笑いと拍手に包まれた。明らかに麻生は自信を回復し、演説にユーモアを交える余裕さえ出てきた。
この「近々」をどう読むか。3月31日の記者会見に続いて、解散権をちらつかせたわけだ。政権の求心力が上がってくると、こうしたちょっとした発言にも、会場から大きな反応が返ってくる。今、麻生は長い冬を抜け出し、ようやく自分にも「春が来た」と感じているに違いない。
対北朝鮮、ブレない強硬姿勢
「春爛漫の季節ですが、いきなり、昨日は北朝鮮からロケットが発射されている。世界中の度重なる警告を無視しての発射。これは断じて日本として容認できるような代物ではありません。断固抗議するのは当然として、国連安全保障理事会の決議違反であることも明白だ」
政経フォーラムの冒頭、麻生は北朝鮮のミサイル発射から切りだした。「国民の生命と安全を守るのが政府の重要な仕事の1つ。(米海軍の)第7艦隊だけに任せておけばいいという種類の話ではない。今後とも自民党は国民の生命、財産を考え、その安全のために頑張っていく決意を新たにしています」と訴えた。
先に小沢が「在日米軍は第7艦隊だけで十分」との見解を示したことを踏まえ、国の安全保障政策に不安が残る民主党には政権を任せられないとアピールしたのだ。
北朝鮮のミサイル発射に対しては、日本の指導者が断固たる姿勢を示さなければならない。この点、外相時代から対北強硬派の麻生にブレはない。定額給付金の支給をめぐり、発言が迷走していた時期とは明らかに異なる。ミサイル発射への対処に万全を尽くし、危機管理対応に全力を挙げれば、結果として政権浮揚につながると麻生は十分承知しているのだ。