ここ数年、日本人の間で知名度が急上昇した中東の近代都市ドバイ(アラブ首長国連邦=UAE)。金融危機でさすがにスローダウンしたものの、その急成長ぶりには目を見張るものがある。世界的に評価の高いエミレーツ航空を利用して、観光やビジネスで訪れた読者も少なくないだろう。
つい数十年前までは砂漠の小さな街が、今や世界有数の観光都市に成長し、超高級一流ホテルがひしめき合う。「カネさえあれば」の条件付きだが、もはや手に入らないモノやサービスはない。この街を歩くと、そんな気になってしまう。
しかしながら、この国に滞在してインターネットを利用すると、たちまち「異変」に気づくはず。日本国内であれば何ら問題なく利用していたサイトでも、見慣れない画面表示とともにアクセスがブロックされることがあるのだ。
ブロック画面では、アラビア語と英語で次のようなメッセージが表示される。「あなたが訪問しようとしたサイトには、アラブ首長国連邦の宗教的、文化的、政治的、およびその他の道徳的価値観に相反するコンテンツが含まれているため、ブロックされました」
すなわち、この国では政府が「相応しくない」と判断したサイトにレッテルを貼り、「事前ブロック」という事実上の検閲を行う。そのうえで、インターネット接続サービスが提供されているのだ。
カネさえ出せば、どんなサービスでも・・・。と思えるドバイでも、「ネット上で自由にサイトを閲覧」というサービスは買うことができない。一部のフリーゾーン内ではこうした制限がないが、あくまでも例外措置だ。
ネットコントロール、中東全体に波及
前回の「ネットが変えるアラブ世界」で指摘したように、こうしたインターネットコントロール政策は、アラブ地域の多くの政府で採用されている。とはいえ、その中身を分析してみると、コントロールの内容や度合いにバラツキがある。
それぞれの事情に応じ、各国はアクセスを禁止するウェブサイトの一覧表(ブラックリスト)を作成する。このリストの状況については、オープンネットイニシアティブ(OpenNet Initiative)という研究グループが詳細な調査を行っている。
このグループによると、アラブ首長国連邦で8713のウェブサイトを調査したところ、その15.4%に当たる1347のサイトがブロックされていた。サウジアラビアの場合、確認できただけでも2000以上のサイトへのアクセスが禁じられているという。