東京2020パラリンピックの開催を契機に、パラアスリートを支援する体制は強化された。しかし、将来の選手候補となる中学生や高校生の育成については手薄な状況だ。この状況を変えようと、パラリンピックの選手会である日本パラリンピアンズ協会が、中断していた奨学生制度「ネクストパラアスリートスカラーシップ」を再始動させた。年間30万円の奨学金を給付するとともに、パラリンピアンがメンターとなって最長3年間支援する。三菱商事など、新たなスポンサーとともに次世代のパラリンピアン育成が始まった。
(田中 圭太郎:ジャーナリスト)
未来のリーダーとなるパラアスリートを育てたい
パリ2024パラリンピックまで1年を切った。
開会式の会場となるセーヌ川の河畔、エッフェル塔に程近い場所に、カウントダウンクロックが設置されている。クロックは両面あり、エッフェル塔を背景にしている側がオリンピック、セーヌ川を背景にしている側がパラリンピックのカウントダウンだ。
パリ2024に向けては、車いすラグビーやゴールボール男子など、国際大会で優勝した日本代表がすでに出場権を獲得している。来年8月28日に開幕する大会に向けて、今後も国内外の大会で好成績を残した団体や個人が、パリ2024パラリンピックの日本代表に選ばれていく。
パラリンピックに出場する選手は、世界トップレベルのアスリートたちだ。2021年に延期になった夏季大会の東京2020パラリンピックでは、日本代表選手団は金メダル13個を含む、過去2番目に多い51個のメダルを獲得した。
ただ、この成績は開催国だったことによる出場枠の増加や、かつてないほどの強化策によって実現したものと言える。その前の大会であるリオデジャネイロ2016では、金メダルを一つも獲ることができなかった。
世界のレベルで戦うには、継続的に若いアスリートを育てていく必要がある。しかし、オリンピックの競技とは違って、中学生や高校生をアスリートとして育成していくシステムは、パラスポーツでは乏しい。これはパラスポーツが長年抱えている課題でもある。
この課題解消の一助となるよう、パラリンピックの選手会である日本パラリンピアンズ協会が自ら動いた。
東京都内で7月10日にシンポジウムを開催し、冒頭で、未来のトップアスリートを育成する制度であるネクストパラアスリートスカラーシップ(以下、NPAS)を、4年ぶりに再開することを明らかにした。