これからの都市開発や街づくりで重要となるキーワードに、「にぎわい」や「回遊性の向上」がある。人が集まる場所には活気が生まれ、経済的な好循環も拡大していく。パナソニック株式会社(以下、パナソニック)では、そんな街づくりに貢献する新たな照明の提案を開始した。認知心理学などの概念から、対象者がその場から影響を受けて、「つい○○してしまう」という「光」の技術とは何なのか。日本でも例のない光の演出による効果や、街や施設への活用方法について、同社、屋外・調光事業推進部 クラウドサービス推進課課長 上野山浩志氏へ話を聞いた。

街や施設の「にぎわい」が豊かな循環を生む

 昨今、官民連携による街の再開発が増加している。従来の自治体主導の都市開発から、民間主導での共同開発が主流となりつつあるのだ。各自治体が保有する資産を最大限に活用できる計画を、民間企業が保有する知見を駆使して計画を立て、継続的な発展へとつなげていく。両者が協力する、「経済活性化と活気ある街づくり」を目的とした動きが加速しつつあるのだ。公共施設などの整備促進を図る「PFI法の改正」も、これを後押ししているといえるだろう。

「これからの街は、 “にぎわい”や”回遊性"が重要なポイントになります。官民連携の事業は、にぎわいを生み出し、収益をきちんと生んでこそサステナブルなものとなって真の地域活性へとつながります。そのサポートを、光(ライティング)を通して行うのが、“アフォーダンスライティング”を提供する目的です」(上野山氏)

 そして、夜間や早朝の時間帯を生かして新たな市場を創出する「ナイトタイムエコノミー」が注目を高めている。光による夜の演出は、ランドマークやライトアップイベントなど、主に非日常感を演出するものが多く、身近に感じるものではなかった。同社はもっと身近な日常の中で、行動や感情に働きかける「ヒューマンスケールのライティング」の実現を通して、街の活性化に貢献したいという強い決意で研究を重ねていったのだ。その結果が「アフォーダンスライティング」につながった。

「街の意図を演出として加える」アフォーダンスライティング

「アフォーダンスライティングは、イルミネーションやプロジェクションマッピングのように光が人を惹きつけるのではなく、光の演出効果で、場所や対象物そのものに心地よさや魅力を感じてもらう技術です。街の景観の魅力を高めながら、建物などが本来持つ意味や意図を照明演出として加えていきます。これこそが、アフォーダンスライティングが提供できる大きな価値の一つだといえます」(上野山氏)

このコンセプトによって導き出されたのが、人に「回遊」「滞留」「誘導」を働きかける照明演出だ。

「回遊」の演出とは、人の歩行速度に合わせて進行方向に光を流すことで、歩行者は光を追いかけるようにして心地よく前に進めるというものだ。

「滞留」の演出は、特定の場所の光をゆっくり明滅させる(明るい、薄暗い状態を繰り返す)ことで人に心地よさを与える。たき火やろうそくの炎を見つめた時の心理作用にも通じていて、自然とその場に留まりたくなるように働きかける。

 これらに加え、同社は新たに「誘導」の演出を開発している。これは、光の明るさや色に変化をつけることで人々を誘導することを目的としていて、正しい順路やゲートへの誘導を働きかけることへの活用が見込まれる。

 これらの演出効果を実証するために、同社では社外の一般被験者を対象に実証実験を行ってきた。回遊性に関しては「光の動く方向に歩きたい」「楽しい」などの項目、滞留に関しては「飽きない」「とどまりたい」「心地よい」などの項目が、一般的な屋外照明より高く評価される結果を得た。被験者へは、先入観を取り払うため、照明演出の目的は明言せず実施をしている。


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光の演出が人へ与える効果と活用方法

 では、具体的にどんな状況を作り上げることが出来るのだろうか。例えば、駅の改札口など人が密集しやすい場所に「回遊」の演出を施すことで、知らずに光の方へ足を進めてしまう。人の流れに働きかける効果が見込めるのだ。こうした役割は、アフターコロナ、ウィズコロナの時代に有用性が高いといえる。

「誘導」の演出は、駅から施設までの導線の強化や、イベント後の混雑緩和への効果が期待できる。さらに、店内での「滞留」の演出は、お客さまへ心地よい滞在体験を提供することで、顧客満足度の向上や新たな購買体験の創出効果が期待できるだろう。

 また、大規模会場など複数あるゲートへの導線に、色分けした照明とアフォーダンスライティングの技術を組み合わせて活用することで、より明瞭な案内が実施できる。そして、公園や通路では、回遊を促す場所とリラックスして滞留を促進する場所に分けて活用することで、その場所全体の心地よさを演出し、「また来たい」と思う体験を創造することが可能だろう。

 同社は、世界遺産「元離宮二条城」で実証実験をかねた公的空間への導入を行った。「ワントゥーテン 二条城夜会」というイベントでは、アフォーダンスライティングの技術で「二条城」の場にふさわしい照明演出をすることで、看板やサインもなく、正しい順路への誘導を働きかける演出をおこなった。いつもとは異なる二条城の魅力に感動する声が多く聞こえてきた。光の演出は、その場の魅力や価値の向上に大きな影響を及ぼし、一人一人に唯一無二の体験を与える強力なサポートの役割があるのだといえるのだろう。

視聴時間 00:19

培った技術の進化で新たな価値と豊かさを提供する

 屋外の公共スペースの照明は、明るく照らすことで安全安心を確保することが最低限必要とされている。今後はそれに加えて、にぎわいや安らぎといった演出をした光環境が求められている。光が人へ与える影響は大きく多くの研究が行われているが、こうした光の動きを用いた心理効果を活用した事例はあまり見られない。だからこそ、同社独自の技術で新たな価値を創造しようと推進されたのが、このソリューションの始まりだ。

 街灯や公共施設などの照明設備を手掛けてきた同社には、「長寿命」や「省電力」、「過酷な環境に耐えられる」といった屋外照明に求められる技術の膨大な蓄積がある。こうした屋外照明の技術と実績をベースにしつつ、今回のアフォーダンスライティングではデザイン思考の手法を採り入れ、徹底した市場リサーチや課題提起、アイデア出し、プロトタイプの作成と検証を重ねることで、人の心理に働きかける照明演出を現実化させたのだ。

 光の演出で潜在意識に働きかけ、その場所自体を好きになってもらう。照明の効果がじんわりと心に浸透し、いつもの日常が一歩豊かになる。その新しいライティングの可能性は、想像以上に大きいのかもしれない。

アフォーダンスライティングについて詳しくはこちら

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