2025年までに約15兆円に拡大する予測がある「スポーツ関連市場」への期待は大きい。日本を代表する家電メーカーのパナソニック株式会社でも、新たな価値提供と未来を創造する役割を担うべく、スポーツビジネスの強化へ乗り出した。同社はどんな未来を描き、どんな価値を提供していくのか。エレクトリックワークス社のスポーツビジネス推進部部長で元ラガーマンの宮本勝文氏に話を聞いた。

スポーツの価値を明確にして未来へつなげる

 同社はスポーツの活性化に多くの投資をしてきた。サッカーのガンバ大阪を皮切りに、バレーボール、ラグビー、社会人野球、アメリカンフットボールなど、数多くの企業スポーツを通して、選手をサポートし、業界を盛り上げる取り組みを継続的に行ってきた。そんな同社が従来のスポーツとの関わりに新たな役割を追加し、スポーツ業界全体が抱える課題に向き合おうと2020年4月に新設したのが、同社のスポーツビジネス推進部である。

 このスポーツビジネス推進部を率いるのは、元ラグビー選手であり、指導者でもあった宮本勝文氏である。日本代表として第1回、第2回のワールドカップに出場し、三洋電機や同志社大学の監督も務めた。長年スポーツと関わってきた宮本氏が実現したいのが、コンテンツとしてのスポーツの価値の向上だ。「日本のスポーツは、地方自治体や首長によっても力の入れ具合に温度差があります。その理由は、収益性はまだまだ低くスポーツの価値が不明確なのが大きな要因です」と指摘する。

統合演出でスポーツの価値向上と街の賑わいを創造する

 宮本氏が描くスポーツビジネスの理想の姿は、2019年のラグビーのワールドカップでの街の賑わいにある。「試合が開催された都市には多くの観客が集まり、コアのファンだけでなく、普段ラグビーに接しない人たちも試合を楽しみ、街は活気に満ちあふれていました。これが、スポーツが持つ本来の価値であり、目指す姿なのです」と宮本氏は語る。

 こうした賑わいが地域にもたらす経済効果は、来訪者が飲食をしたり買い物をしたりする観光収入やスポーツ施設の入場料だけにとどまらない。街自体の認知が拡大することで、住民が流入し不動産価値が上がるという地域全体の価値の向上にもつながっていく。 「今までスポーツと収益を結びつけることはタブー視される風潮がありました。しかし、収益性の向上はスポーツの活性化と価値の明確化につながります。そして、スポーツと地方自治体の連携強化は、地域全体の収益向上に直結します」と宮本氏は話す。


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 街の活性化は、スポーツの収益構造にも影響する。強いチームだけが多くのファンを獲得し、放映権や入場料やグッズ販売で収益を上げるのではなく、周辺地域全体の求心力を高めるコンテンツとしてのチームの役割が生まれるのだ。そこで重要になるのが、ファンエンゲージメントを高めることだ。試合を楽しみ、その周辺の賑わいに触れることで、ファンの満足度を高め、「また来たい」と思ってもらうことで、更なる経済的な効果が生まれていく。

 チームや地域の利益が増加すれば、その資源がチームの強化や周辺施設への投資に充てられ、地域の魅力をより一層高めるという好循環が生まれてくるのだ。スポーツというコンテンツが、さまざまなエンターテイメントと利益を創出する。これが、ソリューションが目指す未来の形だ。

「スポーツビジネス推進部として目指す方向性は、アリーナやスタジアムの中と外の統合演出で、スポーツの価値向上と街の賑わいや活性化に貢献することです」と宮本氏はスポーツビジネス推進部としての使命を語る。スポーツ施設の内部の演出を支援すると共に、スタジアム・アリーナ外に隣接した公園や公共施設にも、人々が楽しみを得る体験を提供していくというのだ。


パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 スポーツビジネス推進部 部長 宮本 勝文 氏

スポーツ業界の好循環を創出していく 

 同社のLED投光器は、2021年10月にFIBA認証を取得した。Bリーグのプレミアリーグ構想では、アリーナの保有と基準を満たすことが義務付けられている。その基準となるのが、国際バスケット連盟  「FIBA」の認証なのだ。これは、各種大会で使用されるボールや設備を認証するもので、同社のLED投光器は照明器具としてアジアで初めてFIBA認証を取得した。

 スポーツと照明器具は密接な関わりがある。スポーツに適合していない 照明器具や照明環境では 、競技への悪影響や怪我につながる可能性が指摘されているのだ。加えて、光漏れによる施設周辺への光害問題も発生している。特に学生やアマチュアスポーツを中心に、厳しい環境での練習を強いられている選手は珍しくない。スポーツ業界の活性化には、学生、アマチュアスポーツの価値向上も重要なポイントだ。

 海外では学生スポーツの収益化が進み、奨学金などで学生選手に還元されているが、日本ではそのようなシステムはあまり無い。才能ある若者の育成サポートも業界全体の課題だと宮本氏は指摘した。学生やアマチュアスポーツが活性化するためにも、プロスポーツの好循環は急務となるのだろう。

 こうした課題に対して、同社が提供できることは多い。競技を記録するための高解像度ビデオカメラ、リモートカメラ、カメラコントロールユニット、マルチビューア、ライブスイッチャーなど、多面的な放送、配信システムを実現するさまざまなソリューションが従来からある。

向かって左側:FLAT HACHINOHE インドアアイスアリーナ「FLAT ARENA」 右側:天王洲運河 船上スペース「T-LOTUS M」

 これらに加え、新たな技術も取り入れたアリーナ内での照明と音と映像を組み合わせた演出も、エンターテイメント性が高くファンエンゲージメント向上に効果的だ。そんなソリューションを導入する、次世代民設民営アリーナの「FLAT HACHINOHE(フラット八戸)」では、独自のLED照明で眩しさを抑えると共に、照明制御技術によるダイナミックな照明演出を可能にした。

 また、新たな屋外照明も開発中だ。2021年10月に東京の天王洲で行われたイベントでは、太鼓の演奏に連動した光による演出の実証実験が行われた。太鼓の音に合わせて、クラウド上のソフトウェアが自動で光をコントロールし、会場の熱気を光で表現するというものだ。光の動きで人の行動に働きかける「アフォーダンスライティング 」も開発している。
 
 宮本氏は「我々は運営者と共に、スポーツ選手に寄り添った環境の構築と、業界全体の活性化へつなげる技術をもってビジネス化していくことが可能です。スポーツの好循環を創出し、推進していきます」と意欲を語った。スポーツを手段として街の賑わいを創造する。地域を巻き込んだ経済の好循環が、スポーツの未来を創造することにつながっていくのだ。

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