外債投資の思わぬリスク?! 格付と通貨に要注意

 日本国債よりも高い利回りなどが魅力の外国債券。しかし、外国債券ならではのリスクもあります。そこで今回は、債券のリスクを測るのに欠かせない「信用格付け」と、外国債券投資でおさえておきたいチェックポイントを解説します。

「価格変動リスク」と「信用リスク」

 外国債券(外債)を含む債券投資のリスクのなかでも、今回は「価格変動リスク」と「信用リスク」に着目して解説したいと思います。

  • 価格変動リスク:世の中の金利の状況や、その債券を発行した国や会社などの財務状況の変化によって債券価格が変動するリスク
  • 信用リスク:債券を発行する会社や国が、利子や満期時の元本の支払いができなくなるかもしれないリスク

 価格変動リスクは、購入した債券を満期まで保有していれば額面金額で元本が償還されるため、満期まで発行体(債券を発行する会社や国)が破綻などしなければ避けられるリスクです。

「信用格付け」は信用リスクをチェックする指標

 信用リスクの程度をチェックする1つの指標として、信用格付け(以下:格付け)があります。

 格付けは、格付け会社が行います。主な格付け会社としては、海外ではスタンダード&プアーズ、ムーディーズ、フィッチの3社、国内では格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社が挙げられます。

 ここからは、スタンダード&プアーズの信用格付けを例に見ていきましょう。信用格付けは、下図のようにAAAからDまでの10段階に分類されます。分類の基準は、発行体の満期までの利払いと、元本の償還を履行する能力です。格付けが下がるほど、事業環境や経済状況の悪化に強く影響される発行体といえます。

信用格付けスタンダード&プアーズの「長期個別債務格付け」を参考に筆者作成

 また、上記の10段階は大きく3つに分類され、AAA~BBBまでが「投資適格格付け」となり、財務内容がしっかりした履行能力の高い発行体とされます。BB~Cまでは「投機的格付け」で、現時点では履行能力があるが、将来の事業環境や金融情勢、経済状況の悪化などより履行能力が不確実になる可能性がある発行体。Dは債務不履行になっている発行体です。

 信用度が低い発行体が発行した債券は、信用度の高い債券に比べて利率を高くして発行しないと買い手がつきません。ですから、信用度が低いほど利率は高くなります。

 格付けは、発行体の財務状況などに応じて随時変更されます。格付けが上がると債券価格が上昇する要因になり、格付けが下がれば債券価格が下落する要因になります。それによって利回りも上下します。

外国債券にはさまざまな種類がある

 次に外債の種類についてみていきましょう。外債とは、「通貨」「発行体」「発行場所」のどれかが外国である債券です。

 例えば、トヨタ自動車がドルなどの外貨で債券を発行すれば、国内企業の債券であっても外債になります。米国のアップル社が日本国内で、円で債券を発行した場合も外債です。前者を「外貨建債券」、後者を「円建て外債」または「サムライ債」と呼びます。

 ほかにも、外国の企業が日本国内で外貨建てで発行する「ショーグン債」、外国市場において円建てで発行する「ユーロ円債」などもあります。

 なかでも最も一般的なのが、ドルやユーロ、インドルピー、トルコリラなどの外国通貨で発行される債券のため、狭い意味での外債が「外貨建て債券」を意味することもあります。

 上記以外の外債の種類としては、二重通貨建債として「デュアル・カレンシー債」と「リバース・デュアル・カレンシー債」などがあります。

  • デュアル・カレンシー債:購入時の支払いと利子の受け取りは円建て、満期時の元本の受け取りが外貨建ての外債
  • リバース・デュアル・カレンシー債:購入時の支払いと満期時の元本受け取りが円建て、利子の受け取りが外貨建ての外債

信用格付けだけでなく発行通貨にも注意

 外貨建債券に投資する際は、発行体の格付けを確認することはもちろん、どの国の通貨で発行されるかも重要なチェックポイントです。通貨によって、金利が異なるからです。

 トルコリラなど比較的、為替変動の大きい通貨で発行された外債の場合、発行体の格付けが高いわりに利率も高く、魅力的に見えることもあるでしょう。しかしそういった債券は、為替の変動によって大きく収益が変化する可能性があり、注意が必要です。

 発行体によっては、同時期に複数の通貨建て債券を発行するケースがあります。その場合、信用リスクの確認も重要ですが、利率とどの通貨で発行されているかも必ず確認して債券投資を行うようにしましょう