国民年金保険料には納付猶予制度もある
国民年金保険料の納付猶予制度とは、20歳~50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得が一定以下の場合、本人が申請し国が承認すれば保険料の納付が猶予される制度です。
猶予制度には学生向けの「学生納付特例制度」とそれ以外の方向けの「納付猶予」があります。「学生納付特例制度」では所得審査は本人のみになります。
免除の種類 | 所得基準 |
---|---|
納付猶予 | (扶養親族等の数+1) ×35万円+22万円 |
学生納付特例 | 118万円+扶養親族の数×38万円 +社会保険料控除額等 |
出所:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」「国民年金保険料の学生納付特例制度」を基に筆者作成
国民年金保険料「免除」と「納付猶予」どっちを使う?
年金を受け取る条件として、10年以上(120か月以上)の保険料納付期間(受給資格期間)が必要です。免除制度や納付猶予制度を利用した期間は、受給資格期間にカウントされます。
ただし納付猶予制度を利用した場合、免除制度とは異なり、保険料を納付していない期間は老齢基礎年金の年金額には反映されません。仮に40年の保険加入期間のうち20年間を全額免除した場合と特例納付した場合に、それぞれ受け取れる年間の老齢基礎年金額(令和2年度)を比較すると、以下のようになります。
【全額納付期間】 781,700円×1/2 =390,850円 |
【全額免除期間】 781,700円×1/2×1/2 =195,425円 |
【全額納付期間】 781,700円×1/2 =390,850円 |
【納付特例期間】 年金額に反映されず =0円 |
免除制度と納付猶予制度では、受け取れる老齢基礎年金額に大きな差がでます。学生以外の方は世帯主が本人の場合、全額免除の申請をしましょう。
国民年金の保険料を未納にするとどうなる?
国民年金には、老齢基礎年金の他に20~60歳まで(老齢基礎年金を受け取っていない60歳~65歳未満の方も対象)の間の死亡や障害になった場合の保障として、遺族基礎年金と障害基礎年金が用意されています。しかし、国民年金に加入していないとこれらの保障を受けることができません。
免除制度や納付特例を利用した期間は、納付期間にカウントされ国民年金に加入している期間になります。一方、保険料を未納にした期間は納付期間にカウントされず、国民年金に加入していないことになります。納付状況によっては国の保障を受けられなくなりますので、保険料未納状態になることは絶対に避けましょう。
納付期間 カウント |
年金額 への反映 |
遺族基礎年金・障害基礎年金の受給資格 | |
---|---|---|---|
納付 | ○ | ○ | ○ |
全額免除 | ○ | ○ | ○ |
一部納付 | ○ | ○ | ○ |
納付猶予 | ○ | × | ○ |
未納 | × | × | × |
出所:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
免除・猶予にした保険料は追納できる
保険料免除・納付猶予(学生納付特例含む)は10年以内であれば、保険料を追納して老齢基礎年金の年金額を満額に近づけることができます。追納した場合は、古い免除期間や古い納付猶予期間から充当されていきます。
追納する期間が3年以上古い場合には、その当時の保険料に加算額を上乗せした保険料を支払います。また、追納した年は社会保険料の金額が増えるのに伴い社会保険料控除額も増えることで、税金の還付など減税効果を得られる場合もあります。
終わりに
今回は国民年金の免除制度、納付特例制度と未納のデメリットについてみてきました。次回は、遺族基礎年金と遺族厚生年金、障害基礎年金と障害厚生年金についてみていきます。