日本労働組合総連合会(以下、連合)は2020年6月30日、「テレワークに関する調査」の結果を発表した。調査期間は2020年6月5~9日の5日間で、同年4月以降にテレワークをおこなった会社員・公務員・団体職員・パート・アルバイト合計1,000名から回答を得た。これにより、テレワークで働く人の意識や実態が明らかとなった。
7割強が「勤務日の5割以上」テレワークを実施
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、テレワーク実施の企業が急増した。十分な導入期間を設けられなかった企業も多い中、労働環境はどのような状況になっているのだろうか。まず、全員に対して本年4月以降に「テレワークを行った頻度」を聞いたところ、「毎日」が26%、「勤務日の7~8割程度」が25.9%、「勤務日の5割程度」が20.8%という結果に。「勤務日の5割以上」テレワークを実施している回答者は、72.7%にのぼった。
年齢層別では、「勤務日の5割以上」と回答した人の割合は若い層ほど高い傾向となり、18歳~29歳では79.2%という結果になっている。
約4割がテレワーク時の「時間外労働」や「休日出勤」を経験
次に、4月以降に実施したテレワークで、「残業代支払いの対象となる時間外もしくは休日労働の有無」を聞いた。その結果、「よくあった」が6.8%、「時々あった」が18.9%、「まれにあった」は12.4%となり、合計で38.1%が時間外労働や休日労働をおこなっていることが判明。
年齢層別にみると、こちらの回答も若い層ほど高い傾向が見られ、「あった」と回答した人の割合は18歳~29歳では51.6%と半数以上にのぼった。
半数以上が「時間外や休日勤務の申告や承認をしていない」
また、残業代支払対象となる時間外・休日労働をおこなうことがあった381名に対し、自身がおこなった時間外・休日労働の「申告や承認経験の有無」を聞いた。
まず、「残業代支払いの対象となる時間外もしくは休日労働をしたにも関わらず申告しないことがあったか」を尋ねると、「あった」との回答は65.1%だった。
また、「残業代支払いの対象となる時間外もしくは休日労働をしたにも関わらず、勤務先に認められないことがあったか」の質問では、「あった」が56.4%という結果に。時間外労働や休日労働をしても申告しないケースや、申告しても認められなかったケースが半数以上にのぼるという現状が明るみとなった。
申告しない理由は「申告しづらい雰囲気」や「不十分な時間管理」
残業代支払対象となる時間外・休日労働を申告しなかった248名に対し「申告しなかった理由」を選択式で聞くと、「申告しづらい雰囲気」が26.6%と最も多い結果に。次いで「時間管理がされていない」が25.8%、「しなくてもよいと思った」が12.1%、「上司に申告をするなと言われた」が11.7%と続いた。
出社時とテレワーク時の労働時間管理方法は「パソコン等の使用時間」や「ネットワーク上の出退勤管理」が多い傾向
また、全回答者に対し、「出社時の労働時間管理方法」を聞いたところ、「パソコン等の使用時間(ログインとログアウト)の記録」が27.4%、「タイムレコーダーによる管理」が18.7%、「ICリーダー等での出退勤時刻の読み取り」が12.2%の順だった。
一方、「労働時間管理をしていない」とする企業も全体の12%にみられ、特に従業員数が99人以下の企業では20.5%と5社に1社の割合となった。
また、「テレワークの際の労働時間の管理方法」を聞くと、「ネットワーク上の出退勤管理システムでの打刻」が27.6%で最も多い結果となった。次いで、「メール等による管理者への報告」が18.7%、「パソコン等の使用時間(ログインとログアウト)の記録」が16.7%に。
従業員の規模別では、出社時の労働時間管理の場合と同様の傾向がみられ、99人以下の企業では「時間管理をしていない」が23.5%と突出して高い傾向だった。
テレワーク継続への課題は「経営者の意識改革」や「経費の負担」など
最後に、全回答者に「テレワークを継続する上での課題と感じること」を聞いた。その結果、意識改革関連として「会社トップの意識改革」が31.3%、「上司や同僚の意識改革」が26.4%、「自分自身の意識改革」が20.8%という結果に。テレワーク継続のために、経営陣の意識改革を求めるテレワーカーが多い実態が判明した。
また、環境整備関連で「経費の負担」が28.6%、労務管理関連で「適切な労働時間管理」が24.2%などとなった。「テレワーク時に発生する経費を、どのように企業が負担するか」や、「情報セキュリティシステムの維持と運用」、「適切な労働時間管理の必要性」などを、課題として捉える人が多いことがうかがえる。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて急速に広がりを見せたテレワーク。しかし、今回の調査で、十分な管理体制を引けずに労働時間超過や、それに対する適切な賃金支払がなされていないケースが多い実態が見えた。テレワークを今後継続させる企業では、労務管理体制の状況把握や適切な管理体制の構築に向けた施策、現在施行している施策の見直しなど、検討してみてはいかがだろうか。
著者プロフィール HRプロ編集部 採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。 |