フェイスブック イメージ(写真:ロイター/アフロ)

 米ニューヨーク・タイムズロイターなどの報道によると、米フェイスブックは今年の米大統領選挙を前に、同社サービス上で政治広告を掲出することをやめるかどうかを検討しているという。

社内で対立する2つの意見

 昨年末ごろから社内で話されていたが、ここ最近の同社に対する批判の高まりや、本選挙が3カ月半後に迫っていることを踏まえ、議論が活発化しているという。

 話し合われているのは、政治広告をやめた場合、それが一部のグループの発言を抑制することにならないか、あるいは、掲出を続けた場合、今よりも多く偽情報が広がり、選挙に悪影響を及ぼすのではないか、という懸念だという。

 もし、掲出をやめた場合、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)のこれまでの方針とは異なることになると、ニューヨーク・タイムズは伝えている。

フェイスブックCEO、「真偽の審判者になるべきではない」

 ザッカーバーグCEOはかねて、政治家の発言は、同社がその是非を判断すべきでないとの方針を示していた。今年5月、米経済ニュースのCNBCに意見を求められた同氏は「SNS(交流サイト)の運営企業は真偽の審判者になるべきではない」と表明。「政治的な発言は民主主義社会において最も慎重に扱うべきものの1つ。政治家のメッセージは皆が見られるようにすべき」と述べていた。

ツイッターCEO、「政治メッセージの伝播は買うものではない」

 一方で、米ツイッターのジャック・ドーシーCEOは正反対の方針を示している。同氏は昨年10月、自身のアカウントへの一連のツイートで、政治的なメッセージの伝播は獲得するものであって、買うものではない」との意見を表明。「政治の意見を金で広めることは多くの問題をはらんでおり、今日の民主主義基盤には対処の準備ができていない。ここで後退する価値はある」とも述べ、全面的に禁止する方針を明らかにした。

物議醸したトランプ米大統領の投稿

 フェイスブックとツイッターの方針の違いは、トランプ米大統領の発言の扱いにも表れた。問題となったのは今年5月29日の投稿。大統領は、フェイスブックとツイッターのそれぞれに「略奪が始まれば、銃撃も始まる」と書き込んだ。これは黒人男性が死亡した事件を受けた人種差別への抗議デモに向けた発言だったが、ツイッターはこれに「暴力の賛美に関するツイッターのルールに違反する」と注記をつけたうえで、利用者が「表示」をクリックしなければ閲覧できないようにし、コメントなしのリツイートや「いいね」、返信を禁止した。

 一方で、フェイスブックは容認し、そのまま閲覧できる状態にした。その後、こうしたフェイスブックの無干渉なアプローチが、ヘイトスピーチ(憎悪表現)や偽情報の拡散を助長しているとして、米議員や市民団体、同社の従業員らが厳しく批判した。