インドの首都ニューデリーで2期目の就任宣誓式に臨んだナレンドラ・モディ首相(2019年5月30日、写真:ロイター/アフロ)

(ジャガンナート・パンダ:マノハール・パリカル国防研究所 東アジアセンター センターコーディネーター兼リサーチフェロー)

 新型コロナウイルスのパンデミックの下、インド太平洋地域に新しい趨勢が生まれつつある。米国の主導する反中の動きは勢いを増しており、中国から撤退する外国企業が出るなど、サプライチェーンにおける対中依存に対する圧力は強くなっている。

 対中関係の見直しを始めている国が多くなっている。例えば日本では、生産拠点を中国から日本に移す場合に補助金(総額22億ドル=約2400億円)を支給している。また、オーストラリア前首相内閣省マーティン・パーキンソン大臣は、オーストラリアのパンデミック発生時の調査を中国に要求した際、中国が恫喝を行ったことで目が覚めたと述べており、同国のスコット・モリソン首相も、最大貿易相手国である中国の脅しに屈してはならないと発言している。不安定なパワーバランスにある印中関係にも、両国間の領土紛争によって陰りが見えてきている。

 同時に、中国政府による「戦狼外交」や「マスク外交」により、中国はアメリカに対して弱い存在ではないとの声も上がっている。