4月6日、緊急事態宣言の発出を表明した安倍晋三首相(写真:ロイター/アフロ)

(尾藤 克之:コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)

 東京都における新型コロナウイルスの感染者急増を受けて、安倍首相は、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を7日に発令する方針を表明しました。実施期間は1カ月程度で、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の都府県が対象となります。しかし、日本医師会や経済界などでは早くから発令を要請しており、いまのタイミングまでずれ込んだことは理解に苦しみます。

 5日時点で人口1400万人の東京都において、PCR検査が実施された人数は4484人です。厚労省によれば、国全体でも総検査数は4万6172人(6日時点)にとどまります。一方で、人口5000万人の韓国では6日時点で46万6804人が検査を受けています。安倍首相はPCR検査の体制を1日2万件へ倍増する方針を表明しましたが、いまも不安は残ります。

緊急事態宣言発令が遅れた理由

 緊急事態宣言の発令はなぜ遅れたのでしょうか。筆者は、その原因は、3月14日におこなわれた、安倍首相の記者会見にあると考えています。

「前回の会見で申し上げたように、1、2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となるとの専門家の皆さんの見解が示されてから2週間余りが経過しました。そして、現時点では爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないかというのが専門家の皆さんの評価です。

(中略)この2週間、学校が休校となり、一日のほとんどを自宅で過ごしてきた児童生徒の皆さんも多いかもしれません。しかし、健康管理、ストレス解消のためにも、人が密集しないようにするなど、安全な環境の下、屋外に出て運動の機会も作ってください。今後、予定されている卒業式についても、安全面での工夫を行った上で、是非、実施していただきたいと考えています」
<自民党HP(https://www.jimin.jp/news/press/141400.html)より>

 この2週間前の2月29日の記者会見で安倍首相は、大規模イベントとの自粛や全国の小中高校・特別支援学校の臨時休校などを要請しました。学校の一斉休校については、その2日前の新型コロナウイルス感染症対策本部ですでに発表し、全国に衝撃を与えましたが、「ここ1、2週間が極めて重要な時期」との首相の発言を受け、ほぼすべての学校が従ったのはご承知の通りです。

 先に首相の発言を引用した会見は、それから2週間後のもの。内容を見ると、「現時点では爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえている」と、明らかに安倍首相は自らが決断した感染症対策に手ごたえを感じている様子がうかがえます。

 この安倍首相のメッセージは、国民に安堵感を与えました。しかし、一方で国民に気の緩みが生じる隙も与えてしまいました。東京都に感染が広まるのはこのあとのことです。

 自分が指示した「一斉休校」などの対策に一定の効果がある。その効果がさらに出てくれば、経済や国民生活に大きな影響が出る「緊急事態宣言」はしなくて済むかもしれない――そうした逡巡の間に、一度は引き締まった国民の気も緩み、感染が急拡大してしまったのです。

 これがここまで緊急事態宣言が遅れ、感染が拡大した最も大きな要因ではないでしょうか。