20日のNY市場は、ドル安水準での取引が続いた。ドル円はNY序盤に82.25レベルまで下落、その後の戻りは82.60レベルまで。その後は82円台前半での揉み合いが続いた。ユーロドルはロンドン市場で1.4548レベルまで上昇したあと、NY市場では一時1.4485レベルまで調整に押される動きもあったが、ほとんどの時間帯は1.45台前半での取引が続いた。欧州株が大幅高となったことに続き、NY株式も堅調に推移した。ダウ平均は序盤に200ドル超高となったあとも高値水準を維持した。商品市況も堅調で金先物がこの日も最高値を更新、原油先物も111ドル台へと続伸した。ロンドン市場でスペイン債入札が順調だったことなどが好感されたほか、株式市場では前日取引後に発表されたインテルや、きょうの取引開始前に発表されたAT&Tなどの好決算が材料視された。
ただ、米債利回りの低下が一服したことや、根強い欧州ソブリンリスクなどが一段のドル安を抑制した面もあった。LCHクリアネットはポルトガル国債取引に関する証拠金を15%から25%へと引き上げている。これを受けてポルトガル10年債利回りは9.65%へと上昇、ユーロ導入来の最高水準を記録した。また、序盤に発表された3月米中古住宅販売は510万件と市場予想500万件を上回ったが、価格は低下しており、販売物件の4割がローンの焦げ付いた住宅だったことなど住宅市場の低迷は続いていた。クロス円はこの日も方向感に欠けており、ユーロ円は119円台、ポンド円は135円周辺での取引が続いている。カナダ円は87円台から86円台前半へと軟調に推移した。ロンドン市場の調整も入っていた。
◆ユンケル議長、EUは通貨統合での葛藤に直面
この日は米金融当局者からの目立った発言はなかった。ここではユンケル・ユーログループ議長の発言に注目してみたい。同議長は20日の講演で、EUは通貨統合での葛藤に直面、金融政策は良く機能しているが財政および経済政策はまだ途上である、と述べている。通貨統合のなかで、金融政策にはECBという統合機関がある一方、財政・経済政策は共通ルールはあるものの参加各国での方針が統合し切れていない、と、ダブルスタンダードの矛盾点を指摘した形。また、各国の台所事情の違いについては、アイルランドとポルトガルの状況は大いに違う、ポルトガルの主な問題点は成長の欠如、アイルランドの主な問題点は銀行部門にある、との見解を表明した。そして、信用危機への根本的な解決策は経済成長、と締めくくっていた。たしかに、経済成長は欧州に限らずどの国にとっても根本的な解決策であることには違いない。過度のインフレが抑制される限りは。
(Klugシニアアナリスト 松木秀明)