最先端好きの若手を中心に
自由な発想の組織づくりが進む
次々に生み出される成果の源泉となる「組織づくり」「人づくり」も進んでいる。現在、NB開発本部は全体で約40名規模だが、その4分の1に当たるメンバーがライフサイエンス領域に取り組んでいる。
だがNOKは、オイルシールで世界に名をはせてきた企業だ。メインストリームで腕を振るってみたいと入社してきた若手も多いだろう。全く未知の分野に配属されて、本人たちはどんな反応をするのだろうか。意外にもその問いに対して宮嶋氏は、「たぶんみんな喜んでいると思う」として次のように明かす。
「若手の中でもNB開発本部に来るのは、大学で最先端領域を学んできた者が多く、企業に入ってもずっと最先端の分野に関わっていきたいという気風があります。
そういう意味では、この本部の創設時に掲げられた『より自由な発想を』というコンセプトのとおり、既存の製品や概念にとらわれない伸び伸びとした人づくり・組織づくりが実現しつつあると考えています」
新規事業開発やイノベーションというと、よく言われるのが「社内に出島をつくる」、「社内ベンチャーとして別組織にする」という話だ。特に日本的「重厚長大企業」ほど、本体から切り離さないと自由な発想や活動は難しいと指摘する識者も少なくない。ただ、宮嶋氏はこれに対して異論もあるという。
「これまでの経験から、やみくもに出島をつくると、かえって本体との壁が生まれてしまうことが分かっています。また新しいことを始める時には、社内のコンセンサスが非常に重要なので、同じ社内でメンバー同士が親密に連携を取れる方が望ましいと考えています。
マーケティングや外回りの営業担当者など、別々の仕事を担当している人間が一つのグループの中で、お互いの仕事に線を引かずに連携し、融合できるようにするべきだと考えています」
マネジメントの側も、かつての日本企業にありがちなセクショナリズムに陥らないよう、既存組織との交流や開発チームのメンバーのシェアなど、「壁をつくらない組織」を生み出すため、宮嶋氏は日々心を砕いている。
IoTなどで存在感示すセンシングに注目
注文を受けるだけでなくニーズの先回りを
ライフサイエンス領域を重点領域の一つとして力を注ぐNOKだが、今後は、ウエアラブルなど人体に直接触れて利用する製品などへも触手を伸ばしていくという。
とりわけヒューマンインタフェースやセンサーにはNOKの技術的強みを生かせると宮嶋氏は読む。「導電ゴム素材等のノウハウは当社が最も得意とする分野であり、それらを十二分に活用することで、将来のさまざまな機器の開発を支えていきたい」とさらに熱量を上げる。
オイルシールのリーディングカンパニーとして常に存在感を示してきたNOK。それゆえに「そこから一歩踏み出した技術」にチャレンジする文化が生まれにくかった側面がある。
だからこそNB開発本部が生まれた。宮嶋氏は「顧客企業の注文に応じて開発するだけでなく、目まぐるしく変わるお客様のニーズを先回りできたら」と意気込みを語る。