オイルシールのトップメーカーとして、世界の市場をリードしてきたNOK株式会社。同社が自動車業界を始めとした市場の激変に対応すべくNB(ニュービジネス)開発本部をスタートさせてから、間もなく丸3年を迎えた。

 さまざまなチャレンジや試練を乗り越えて、いま新領域開拓はどのような成果を生み出しつつあるのか。同本部 新商品開発部 部長の宮嶋慶一氏に聞いた。

無数の未来ビジョンから生まれた
「ライフサイエンス」の可能性

 これまでNOKのニュービジネス創造への取り組みを紹介してきたが、同社のNB開発本部を中心とした取り組みが、現在どのような領域に着目し、どんな製品や技術を生み出しつつあるのだろうか。

 NB開発本部では、常に次なる新規事業の可能性を模索しているが、そのうちの一つとして成果が見えてきたのが「ライフサイエンス領域」だ。しかし、自動車用のオイルシールやOリングなど高分子のゴム製品や電子部品では世界的なシェアを誇る同社にとって、ライフサイエンス領域とは意外な印象だ。

 その疑問に同本部新商品開発部部長の宮嶋慶一氏は「あくまで当社の既存技術や事業という大きな基盤があり、そこから新たな事業を創出するスタンスに変わりません」と語る。

 マーケットニーズが不透明さを増す時代にあって、メーカーは「要望されたもの」だけをつくっていては生き残れない。顧客が何を求めているのかを先読みし、そこから得た無数のヒントから、自分たちのリソースやノウハウとマッチするもの、新たな市場の可能性を秘めているものを選び出すことが必要だ。

 今回の「ライフサイエンス」も、NOKが80年間にわたって培ってきた技術力とノウハウを基に、新たな需要が期待できる市場に向けて打ち出されたメッセージの一つだと宮嶋氏は位置付ける。