アフリカでのフランスのプレゼンスが増している。多国籍軍を引っ張る形で行われたリビア空爆がNATO(北大西洋条約機構)主導となってからも中心的立場は譲っておらず、旧植民地コートジボワールでの内戦でもバグボ前大統領への攻撃を仕かけ身柄を拘束している。
サルコジ政権の積極策が裏目に
両国での作戦には4000人もの兵力を投入する力の入れようである。あくまでも人権擁護のための軍事行動と謳ってはいるが、支持率が低下しているニコラ・サルコジ大統領が来年に迫った大統領選に向け、人気回復に躍起になっている姿が見えてくる。
しかし、そんな積極性が必ずしも良い結果をもたらすとは限らない。今年1月、西アフリカの内陸国ニジェールの首都ニアメでフランス人青年2人が誘拐された時は、早速救出に向かった仏軍特殊部隊が犯人グループと銃撃戦となり、人質は死亡してしまっている。
「テロリストには屈しない」と、早急なる出動を命じたサルコジ政権の積極性が裏目に出てしまったのである。
同じニジェールでは、昨年7月にもフランス人救出に失敗している。これらはすべて「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(AQMI)」による犯行である。
今ではニジェール、マリ、アルジェリアあたりのサハラ砂漠西域最大の治安不安要因ともなっているが、もともとアルジェリアで宗教色が薄まったアブデルアジス・ブーテフリカ政権に対し反旗を翻したイスラム原理主義勢力が母体。
ニジェール人の富はウラン
現在劇場公開中の『神々と男たち』(2010)で描かれたアルジェリアの修道士誘拐惨殺事件を引き起こしたGIA(武装イスラム集団)が、2006年、アルカイダ組織に合流してできたものである。
こうして多くの人質事件が急展開を見せる一方で、昨年9月、ニジェール北部アーリットで発生した誘拐事件はいまだ解決を見ていない。
この時もAQIMが犯行声明を出していたのだが、そこには「我々の富を搾取してきた者は立ち去れ」とのコメントも付け加えられていた。その「富」とはウランのこと。
実は、フランス経済の一翼を担っている原子力産業の最大手アレバ社の社員5人が人質に含まれていたため、「慎重な」対応をしている、と推測されているのである。