ノーベル賞級科学者の輩出を目指したエリート科学大学で知られるKAIST(カイスト=韓国科学技術院=Korea Advanced Institute of Science and Technology)で、今年に入って学生や教授が相次いで自殺するという悲劇が起きている。

わずか3カ月で4人の学生と教授が相次ぎ自殺

転落防止柵で地下鉄駅での自殺減少、漢江への飛び込みは増加 韓国

自殺防止のために転落防止柵を設けたソウルの地下鉄。地下鉄への飛び込み自殺は減ったが漢江への飛び込み自殺は増えている〔AFPBB News

 全国から科学分野のエリート学生を集めて厳しい教育をすることで有名な大学だが、その一方で学生は想像もできないストレスを抱えていたようで、韓国の猛烈競争社会の犠牲者となってしまった。

 韓国も日本と並んで自殺者の多い国だが、最高のエリート科学大学で、年初からわずか3カ月強の間に学生4人と教授が相次いで自殺をしたというのは異常事態だ。

 自殺した学生は、韓国の科学分野での英才教育の拠点校である韓国科学英才高出身者や、高校時代にロボットコンテストで活躍した経歴があるなど秀才ばかり。

 このうち2人は学業のストレスなどからうつ病などの診断を受け、自殺直前に休学届けを出していた。

 KAISTとは一体どんな大学か。韓国の教育熱の高さは広く知られている。ひと昔前ならソウル大学を頂点に延世大学や高麗大学が並ぶというのが「大学ランキング」だったが、10年以上前から理工系で圧倒的なトップに名を連ねているのが、国立であるこのKAISTだ。

科学系の「虎の穴」

 全国から優秀な学生をソウルから離れた大田直轄市郊外のキャンパスに集め、学生同士で猛烈に競争させながら鍛え上げる。科学系の「虎の穴」のような教育機関だ。

 多くの卒業生が、KAISTの大学院や海外の有名大学の大学院に留学して博士号を取得する。その後、学者生活に入るか、サムスン電子など一流企業で研究を続ける。これら大企業の社長級幹部にもKAIST出身者が多く、理工系学生の憧れの大学であることは間違いない。

 1学年の定員は1000人弱。全国の成績上位者だけが受験するのは当然だが、それ以外に特に科学分野で突出した能力を示した場合、「高2修了」時点で飛び級で入学させる。

 在学生の親によると、「飛び級入学者の数は、以前は入学者の8割ほどに達していた。今も半数近くになる」というから驚きだ。