「口座維持手数料」という、聞きなれない単語が今話題となっています。「銀行口座=無料で開設・利用できるもの」と考えている方が大半ではないでしょうか。しかし、これからのマイナス金利時代においては、認識を変える必要があるかもしれません。口座維持手数料とは何か。求められる利用者の心構えを解説します。
口座維持手数料とは何か
口座維持手数料とは、金融機関の利用者が、保有する口座を維持・管理してもらうために金融機関に支払う手数料のことです。
すでに導入されている海外の例を見ると、金額としては大体月額200円程度、年間2000円〜3000円であるケースが多いようです。
日本でも、例えば、証券会社の証券口座を開設している方の中には、「口座管理手数料」と呼ばれる手数料を支払った経験のある方もいるかもしれせん。
証券口座とは異なり、銀行口座については、今まで一部の金融機関を除いては残高に関わらず口座の維持費は無料でした。仮に、口座維持手数料が導入されることになれば、お金を預けることに対してのコストが発生することになります。
口座維持手数料の背景には「日銀マイナス金利政策」
口座維持手数料の導入が検討されている背景には、日本銀行によるマイナス金利政策があります。マイナス金利政策について理解していないと、口座維持手数料は利用者にとってより受け入れにくい制度であるかもしれません。まずは、マイナス金利が何なのかを解説していきたいと思います。
マイナス金利とは、皆さんが普段利用する民間銀行と、政府や民間銀行のお金を預かったり貸し出したりする役割を担う日本銀行との間に適用される金利のことです。両者の間に“マイナス”の金利が適用されるとは、どのようなことなのでしょうか。
私たち預金者が民間銀行に預け入れたお金は、企業や個人に貸し出す貸金として利用されるほか、「民間銀行→日銀」へ再預け入れが行われています。その日銀に再預け入れしている預金の一部について、現在、”マイナス”の金利が適用されているのです。必要以上の日銀への再預け入れを減らし、貸金や投資などに利用するよう促すことで、経済を活性化させることが目的です。
つまり、民間銀行はコストを支払って日銀に預け入れをしているということになります。そのコストが民間銀行の財政を圧迫しているのです。
また、民間銀行の収益源には、先述した企業や個人にお金を貸し出す際に受け取る貸出金利息があります。しかし、マイナス金利を含めた金融緩和政策の影響により貸出金利が低下し、さらに銀行が収益を上げにくくなっているのが現状です。
各銀行は預金金利を引き下げたり、ペーパーレス化やATMの削減により収益の改善を図っていますが、なかなか苦しい状況にあります。そこで、コストを補う新しい収入源として検討されているのが、口座維持手数料というわけです。
もちろん、私たち利用者としては、今まで無料で利用できていた銀行口座の維持に手数料がかかる可能性があるということで受け入れ難い部分もあるかと思います。しかし、マイナス金利自体が国全体の経済状況に起因するものであることを考慮すると、仕方のないことでもあると言えるでしょう。
なるべく個人としてのコストが少なく済むように、賢く口座を利用する方法はないのでしょうか。