財政危機に喘ぐポルトガルで、政府案の財政緊縮策が議会により否決されたことを受け、3月23日、ジョゼ・ソクラテス首相が辞任した。6月5日に総選挙を実施することが発表されている。
1兆円もの国債が償還期限迎えるポルトガル
ポルトガルは、今月と6月には合わせて92億ユーロ(1兆円強)もの国債が償還期限を迎えることもあり、EU、国際通貨基金(IMF)への救済要請は避けられないと見られている。
東日本大震災と原発事故、中東情勢、と不安要素が山積する中、世界経済への影響が懸念されている。
今ではサッカーぐらいしか世界ニュースになることのないこの国も、かつて大航海時代は世界の中心であったことは、西洋文化の多くがポルトガルよりもたらされた日本でもよく知られるところである。
しかし、それ以外のこととなると何も思い浮かばない、というのが正直なところだろう。
ポルトガルの巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ監督作『ノン、あるいは支配の空しき栄光』(1990)は、そんなポルトガルの歴史が概観できる。
ローマ帝国に対抗した歴史の皮肉
支配を試みた末の敗北の積み重ねでしかない自国史を描いており、「自虐的でけしからん」という批判を本国で少なからず浴びた作品でもある。
冒頭、1974年のアンゴラで戦う兵士たちが登場する。この頃、アフリカ植民地の多くは既に独立を果たしており、虫食い状に残された植民地の多くはポルトガル領。その1つがアンゴラだった。
東西冷戦や隣国スペインのフランシスコ・フランコ政権の独裁ぶりに隠れて目立たなかったものの、アントニオ・サラザールに始まるこの国の権威主義的独裁は社会に閉塞感を与えていた。
そして、ポルトガルの若者たちは、植民地ではなく「海外州」であるとされるアフリカの地で、「分離を叫ぶゲリラたち」の襲撃に悩まされる日々を送らされていたのである。