「系列」は日本的経営を代表する言葉の1つだ。「ケイレツ」という呼び方で、そのまま世界のビジネス界で通用してしまうほど有名でもある。

 ただし、そうやって国際舞台でケイレツが語られる時、良い意味で使われることは少ない。系列の企業にしか仕事を出さず、外からの参入を容易にさせない閉鎖的な取引慣行がケイレツだからだ。海外の企業にしてみれば日本市場の閉鎖性を象徴する言葉であり、日本でビジネスをやる時の最大の障害として認識されているからである。

 日本でも、日本的経営の見直しが盛んに言われた頃、系列は悪しき慣行だと非難の的になったものだ。「仲間取引」だから品質も上がらないし、取引価格も市場原理が働かない高止まり、というわけだ。効率性からはほど遠いと考えられていた。

 ここに競争原理が働けば、品質も上がるし価格も安くなると言われた。系列こそが日本経済が活性化しない元凶であり、これを壊せば日本経済は新たな成長に向かって進める、と期待されたものだ。もちろん、系列の破壊は参入障壁の撤廃になるのだから、海外企業にとっては大歓迎である。かくして、系列は大批判を浴びたのである。

 しかし、系列の破壊は簡単にはいかない。長年にわたる取引関係、人間関係、さらには資本関係と何重もの関係で出来上がっているのが系列だからだ。日本的な義理人情までもが深く関わっているから、系列を無視しようとすれば、一波乱も二波乱も覚悟しなければならない。

 それには大変なエネルギーを費やさねばならない。それなら系列の中にいた方がいい、と思うのが、平穏を愛する日本人的発想である。だからこそ、系列はどんどん強固になってきたのだ。強固すぎて壊せなくなってしまった。

500以上のサプライヤーと取引を停止した日産

 その系列を壊した例として有名なのは日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)である。

 ゴーン氏が仏ルノーから日産の最高執行責任者(COO)として乗り込んできたのは1999年3月のことだった。そして、彼が指揮してまとめたのが日産の「リバイバルプラン」。赤字に陥っていた日産は、それを実行することで翌年には黒字に転じる。ゴーン氏は一躍、「凄腕の経営者」として日本中から注目されることになるのだ。