(古森義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
安倍晋三首相の中国への協調姿勢が米国の対中対決政策とまったく相反する形となってきた。
トランプ政権が政治や安保面で中国との闘争を宣言するのに対して、安倍政権は中国との友好的な交流の拡大を強調している。このままだと対中政策をめぐり日米両国が大きく離反する危険性も生まれてきた。
安倍首相の演説は願望の表明
安倍首相の中国への融和的な姿勢は1月28日の国会での施政方針演説で明らかにされた。同首相は演説の中で、中国に関して以下のように語った。
「昨年秋の訪中によって、日中関係は完全に正常な軌道へと戻りました。『国際スタンダードの下で競争から協調へ』『互いに脅威とはならない』、そして『自由で公正な貿易体制を共に発展させていく』。習近平国家主席と確認した、今後の両国の道しるべとなる3つの原則の上に、首脳間の往来を重ね、政治、経済、文化、スポーツ、青少年交流をはじめ、あらゆる分野、国民レベルでの交流を深めながら、日中関係を新たな段階へと押し上げてまいります」
以上を文字通りに解釈すれば、日中両国の間にはなんの問題も支障もないということになる。「完全に正常な軌道へ戻った」というのだ。
ところがこの発言は願望の表明であって、現実の認識とは思えない。