関西電力は5月9日、大飯原発4号機を再稼働した。新規制基準のもとでの再稼働は8基目だが、他方で大飯1・2号機は廃炉が決まった。これで福島第一原発を含めると、廃炉が決まった原発は18基となり、全国に60基ある原発の3割が廃炉になる。
原発が廃炉になった原因は「運転開始40年で廃炉にする」というルールによるものだが、今後10年以内に10基が運転開始後40年を迎える。このままだと日本の原発は大幅に減り、温室効果ガスの排出は増え、電気代は大幅に上がるおそれが強い。
原発は震災前の半分以下になる
政府はこの夏に出す予定のエネルギー基本計画の骨子案をまとめた。「脱炭素社会」を掲げて再生可能エネルギーを主力と位置づけ、原子力は現状維持を目標としたが、このままでは「2030年に温室効果ガス排出量を2013年度比26%減らす」というパリ協定の約束は達成できない。これは簡単な計算で分かる。
今のエネルギー基本計画では、2030年に原子力の電源比率を20~22%としており、これがパリ協定の目標に対応する。新しい基本計画もそれを踏襲する予定だが、この目標を達成するには30基以上の原発が稼働する必要がある。
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だがこの図のように、廃炉になった18基を除く42基のうち、16基は安全審査を申請していない。この大部分は追加的な安全対策のコストが高く、最終的に廃炉になる可能性が高いので、残るのは26基だ。しかし40年ルールが適用されると、他にも廃炉になる原発が出てくるから、2030年までに動くのは15基、電源比率でいうと10%程度だろう。これはエネルギー基本計画のほぼ半分である。
再生可能エネルギーは、送電コストや環境制約を考えると、10年以内にピークアウトすると予想されるので、再エネの比率を(楽観的に)25%としても、非化石エネルギーは35%程度というのが大方の見方だ。したがって火力の比率は65%となり、震災前の60%より増える。これではCO2排出量は増えるだろう。