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「マスターズ」に向け、世界を舞台に戦う準備も必要だ(「WGC メキシコ選手権」にて、筆者撮影)

(文:舩越園子)

「やっと、スタートライン。やっと、自分のやりたかったことが始まった」

 世界選手権シリーズの「WGC メキシコ選手権」会場で、宮里優作は拳を握り締めながら、何度も何度も「やっと」を口にした。

 やりたかったこと――もちろん、それは長い間、目標に掲げてきた「マスターズ」(2018年は4月5~8日開催)に、37歳にして初出場することを指していた。

 昨年11月の日本ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」を圧勝して逆転で賞金王に輝いた後、アジアンツアー最終戦「インドネシアン・マスターズ」(12月、4位)でマスターズ出場資格である世界ランキング50位以内に食い込み、ようやく手に入れた「オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ」への切符。

 マスターズ委員会から招待状が届いたことを報じた日本メディアの複数の記事に、宮里と父・優氏との約束の言葉が引用されていた。それは、2007年に結婚した宮里が披露宴のスピーチで口にした言葉とされていた。

「いつか必ずオヤジをマスターズに連れていきます」

 だが、よくよく聞いてみたら、それは宮里がまだ高校生だった1990年代半ばごろに父親と交わした約束だそうで、それを公にしたのが結婚披露宴だったということ。父と息子の約束は、結婚より10年以上も前、今から20年以上も前に交わされたものだった。

「高校生のとき、オヤジがぼそっと言ったんです。『マスターズに、いずれは連れていってくれよな』って。まあ、特別な理由や意味があるというよりは『行きたいなあ』ぐらいの感じでしょう。でも、本当に行きたがっていて、『行ったら死んでもいい』って(笑)。ついこの前、(病気で倒れて)本当に死にかけましたけど。でも今年、オヤジとの約束がやっと叶います」

 宮里が拳を握り締めながら「やっと」を強調した理由は、そこにあった。

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