「大衆紙化」「エンタメ化」は新聞の苦境の表れか(写真はイメージ)

 今年は国会が、無意味な話題で荒れた年だった。森友学園の国有地払い下げは朝日新聞が2017年2月に報じてから騒がれ、国会でも野党が取り上げた。加計学園の獣医学部新設は単なる怪文書だが、これも5月に朝日新聞が報じて事件になった。

 どちらも現金の授受があったわけでもなく、普通はスキャンダルともいえないが、共通点がある。安倍首相が(間接的に)からんでいたことだ。森友学園では彼の妻が講演し、加計学園は彼のゴルフ友達が経営していた。それだけのことだが、毎日こんな話をマスコミが取り上げたのはなぜだろうか。

安倍政権の気持ち悪さ伝えたい

 その1つの手がかりが、朝日新聞の高橋純子編集委員にインタビューした「安倍政権の気持ち悪さ伝えたい」という日刊ゲンダイの記事だ。「時に〈エビデンス? ねーよそんなもん〉と開き直る」という言葉が話題になったが、これは文脈が違う。彼女の発言のポイントは「安倍政権の気持ち悪さ」だ。

安倍政権の振る舞いや政策を正面から論じても読者はピンとこない。[・・・] 欺瞞を正面から論破するのは難しい。だから「なんか嫌だ」「どっか気持ち悪い」などといった自分のモヤモヤした感情をなんとか言葉にして読者に伝えないと、権力に対峙したことにならないんじゃないかと思うんです。

 

 政策を正面から論じても論破できないから、モヤモヤした感情を「身体性のある表現」で伝えるのだという。身体性とは「論の精緻さよりも、筆者の感情を込めた文章」らしいが、具体的に何が気持ち悪いのか、政権が何を改めるべきなのかは語らない。

 高橋記者は2016年2月に「だまってトイレをつまらせろ」というコラムで話題になった。トイレに新聞紙を流して詰まらせることが安倍政権批判になるという意味不明の話だが、「炎上」させてアクセスを増やす効果はあった。