北朝鮮の韓国・延坪島への砲撃事件によって緊張が高まったままの朝鮮半島情勢をめぐり、米中間の駆け引きが続いている。

 しかし、スタインバーグ米国務副長官らの訪中でも議論は平行線をたどり、有効な打開策は打ち出せなかった。

 米国は中国に、北朝鮮がこれ以上軍事的挑発行為を繰り返さないよう圧力をかけることを期待し、中国はそれに応える形で、対話による緊張緩和を重視した「6カ国協議」首席代表者による緊急会合開催を呼びかけている。だが、無条件での会合開催を米国や韓国が受け入れる余地はない。

あくまでも北朝鮮との対話優先を望む中国

 12月上旬にワシントンで行われた日米韓3カ国外相会談で、対話再開の条件として北朝鮮のウラン濃縮の停止、国際原子力機関による査察の受け入れなどが挙げられたが、これらの条件を北朝鮮が無条件で呑む可能性は、現時点では極めて低い。

 北朝鮮への圧力を優先する米国、韓国、日本と、対話優先の中国との主張の溝は深く、事態は膠着の様相を濃くしている。米国や韓国は、軍事演習による報復能力の誇示以外に打つ手がないのが現状である。

 北朝鮮に対する懲罰的軍事力行使のオプションが実際にないならば、中国が主張するように、北朝鮮を外交手段によって抑制するための手段は「6カ国協議」しかないことになる。

 中国にしても、北朝鮮の暴発や崩壊を招きかねない厳しい圧力を実行するつもりはない。つまり、中国にしても6カ国協議以外の選択肢はないのだ。

 中国は戴秉国・国務委員を訪朝させ、緊急会合参加の意思を取り付けたが、米国などが出した条件を呑むつもりがないばかりか、国連制裁の解除すら求めている。

中国にとって北朝鮮は不可欠な「緩衝国家」

 北朝鮮問題について、原点に立ち返って整理してみたい。

 最初に指摘されなければならないのは、北朝鮮と国境を接する国で、北朝鮮の崩壊を望む国はないということである。難民の大量流入や統一のための費用負担など何らかの経済社会的コストを被る中韓露は、その点では一致している。