トランプ米大統領が次々と保護主義的な政策を打ち出している。その矛先は日本の量的緩和策にも及んでおり、為替市場には動揺が広がっている。トランプ政権の真意はまだ分からないが、米国が本格的な保護主義に舵を切った場合、日本など周辺各国が受ける影響は大きい。
だがトランプ氏の発言に対して過剰に反応するのも考えものである。保護主義的な政策が世界経済にどのような影響を与えるのか、冷静に分析する必要があるだろう。
批判の矛先はとうとう日本の為替に
トランプ氏は1月20日に大統領に就任すると、すぐにTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱を宣言し、NAFTA(北米自由貿易協定)について再交渉する方針を明らかにした。続いて、メキシコ国境での「壁」の建設や、難民・移民の入国制限に関する大統領令にサインするとともに、不法移民に寛容な都市への交付金削減も指示している。さらに、国境税を導入することで輸出を促進し、輸入を制限する方針も明らかにしている(詳細なスキームは不明)。
トランプ氏による攻撃の矛先は為替にも及んでおり、とうとうドル円相場が批判の対象となった。トランプ氏は1月31日にホワイトハウスで行われた製薬会社幹部との会合において、中国と日本の為替市場について言及。「日本は資金供給で有利な立場にある」と強く批判した。資金供給というのは、日銀の量的緩和策のことを指しているとみられる。