尖閣問題で日本防衛確認=南シナ海で対中強硬姿勢-次期米国務長官

米上院外交委員会の公聴会で証言する次期国務長官候補レックス・ティラーソン氏(2017年1月11日撮影)〔AFPBB News

「偉大なアメリカの復活」VS「中華民族の偉大な復興」

 世界中に「トランプ・ショック」を与えた「大統領らしくない」ドナルド・トランプ氏が大方の予想を覆して、世界で最も影響力のある超大国米国の次期大統領に選任された。

 選挙期間中は、人種差別や女性蔑視などと非難された政治的に危うい発言や、「メキシコ国境に壁を!」「イスラム入国禁止」など、過激で誇張の多い言動を繰り返したが、それでも米国民の厳粛な審判は「歴史に残る番狂わせ」と言われる結果に落ち着いた。

 むろん、すでに終わってしまった選挙戦について云々するのは、本論のテーマではない。

 これから、トランプ新政権が採るであろう戦略や政策、その中にはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)離脱や在日米軍駐留経費の全額負担要求といった、そのままではわが国にとって望ましくない内容も含まれるが、特に21世紀の最大の脅威である中国に対する戦略や政策が、わが国の安全保障や防衛にどのような影響を及ぼすかに大きな関心が寄せられる。

 2017年1月20日に第45代米国大統領就任式を控えたトランプ氏の戦略や政策は、就任宣誓演説や2月の最初の一般教書などで逐次明らかになろうが、選挙期間中から今日までの動きで、そのアウトラインが少しずつ顕わになっている。

 トランプ次期米大統領が示した最大の公約(国家目標)は、「偉大なアメリカの復活(Make America Great Again)」であり、それを果たすために「アメリカ最優先(America First)」の政策を採るということである。

 また、大統領選挙直後の勝利宣言において、トランプ氏は「全米国民の大統領として、米国の夢を実現する」と誓った。

 米国の夢としての「偉大なアメリカの復活」にも、また「アメリカ最優先」にも、中国などの台頭によって米国のパワーと地位が相対的に低下しつつあるとの深刻な認識が作用しているのは間違いなかろう。

 かたや中国は、「中国の夢」としての「中華民族の偉大な復興」を国家目標とし、欧米が中心になって築いてきた国際秩序に代えて、自国が中心となる国際的枠組み、すなわち「中華的新秩序」の形成を外交戦略の重要な柱に掲げている。

 両国の国家目標を比べてみると、大変似通ってきたことに気づかされるが、それは偶然の一致ではない。既存の超大国と、これに追いつき追い越そうとする新興大国との覇権的対立の構図がその根底にあるからだ。

 バラク・オバマ大統領は在任間、中国に対して、いわゆる融和的関与政策を採ってきた。

 しかし、トランプ次期米大統領がなりふり構わない姿勢で「偉大なアメリカの復活」と「アメリカ最優先」を打ち出したことで、中国との外交、経済、安全保障・軍事などの分野で、両国の摩擦や衝突は避けられず、これからの両国間の戦略・政策調整には大きな困難を伴うことが予想される。

 むしろ、事態はより先鋭化して真っ向勝負になる恐れが強まるとの見方が有力になって来るかもしれない。

 そこで、これまで公表されたトランプ次期大統領及びその周辺の対中国戦略・政策に関する発言や論調を、外交、経済、安全保障・軍事の項目に従って概観し、トランプ政権の対中国政策の行方を占ってみることにする。