ロシアにいると、最近の日中間の不協和音は他人事ではない。日本の対応をじっと観察しているロシアがいつ北方領土を巡って日本に居丈高な態度に出るか、不安が横切る。
中ロが歩調を合わせて日本への挑戦、はあり得ない
しかし、領土問題を巡り、中ロが歩調を合わせて、南北から日本に挑戦する、という推測には違和感がある。モスクワで見る中ロ関係は、蜜月状態にあるとはとても思えないからだ。
ロシアの対外政策を考える際に注意しておきたいのは、政治と民衆の感情とは必ずしも一致せず、また、長期的に見ると政治は民衆の感情と同じ方向に集約していく傾向がある、ということだ。
最近ではグルジアを巡るロシアの政策がその典型であろう。いかに政治的にグルジアとの関係を凍結しようとしても、ロシアの歴史に刻まれたグルジアの影響は、それを消し去ることはできない。
一方中国については、中国をロシアのエネルギー政策における最大の客先としながらも、民衆レベルでの対中警戒感を解くことは絶対にできない。
最近、モスクワで日本企業に対して極東ロシアの開発プロジェクトを紹介するセミナーがあって、出席した。いくつものプロジェクトが紹介されたが、何も日本企業、それもモスクワに駐在する駐在員を対象にする必要もなさそうに思われた。
日本と組んで中国を牽制したい
地理的な感覚から言えば、極東においては中ロで進めるのが何よりも現実的に見えるプロジェクトも多く含まれていた。実際、セミナーでは言葉の端々に中国を意識した発言が聞こえる。
ただ、それは中国にプロジェクト参加を要請する、という方向とは正反対で、日本と組むことで中国の参加を不要としよう、というアプローチなのだ。
「プロジェクトを各国に紹介すれば、中国が触手を伸ばすことは分かり切っている、その前にぜひ日露間で手を結んでしまおうではないか、それを言いたいがために、モスクワまで来たのだ」
今回のセミナーを取りまとめたロシア地域発展センターのメラメド氏は、セミナー後の私の質問にこう答えてくれた。