1.2017年を日中新時代の幕開けの年に
安倍晋三政権は2012年12月に発足して以来まもなく丸4年が過ぎようとしている。2013年には歴史認識問題を巡り米国との関係が悪化したが、その後修正を図り、2015年には安倍首相が日本の首相として初めて上下両院合同会議でスピーチを行った。
加えて、新たな日米防衛協力のための指針に基づく防衛協力の強化、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)成立への協力など安全保障と経済の両面で大きな成果を上げ、過去最高の状態と評価される日米関係を構築した。
昨年から今年にかけては米国の後押しもあって日韓関係が急速に改善したほか、日ロ関係も北方領土問題を巡り、大きな節目を迎えようとしている。
このように安倍政権は4年の間に、外交面で目覚ましい成果を次々と実現してきた。もし12月に日ロ関係の懸案解決のめどが立てば、次の外交上の重要課題は日中関係の改善であろう。
1990年代半ば以降、日中関係は常に懸案を抱えていた。特に2012年9月に尖閣問題が発生した後は、過去最悪の状態に陥った。日中関係の悪化は国民感情にも暗い影を落とし、日本人の大半が中国に対して反感を抱くようになってしまった。その背景には国民の反中・反日感情を煽るメディア報道の影響も大きい。
日本と中国が世界経済において果たすべき重要な役割を考えれば、いつまでもこんな関係を続けるべきではない。
IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しによれば、日中韓東アジア3国がリードするアジア地域全体のGDP(国内総生産)の規模は、2010年前後以降、北米、欧州それぞれの地域の経済規模を大きく上回り始め、世界経済を支える存在となっている。
そして、2020年には日中韓3国のGDPの合計が米国を上回ると推計されている。
今年は英国がEUから離脱し、来年は米国でドナルド・トランプ政権が誕生するなど全く予想外の出来事が続き、世界経済の不透明性が高まっている。そういう状況下であればこそ、日中韓3国の担うべき役割が一段と大きくなっていくと考えられる。
特に日中両国の責任は重く、世界経済が混沌の度合いを増すと予想される来年以降、両国関係を大きく改善し、経済関係の緊密化により日中新時代の幕開けを実現することができれば、世界経済にとって大きな支えとなることは明らかである。