全く不当だ。米国では「懲罰的賠償」というのが認められていて、悪質な者には損害額の何十倍もの賠償を命じることがある。

 日本でも、大企業が中小企業を見くびって、契約を無視したアフターサービスを要求したり、中小企業の特許を勝手に使ったり、不当な値引きを要求したりするような場合は、懲罰的賠償をとって、二度とそんなことを考えさせないようにすべきではないか。今回の場合、倒産のリスクすらあったわけだから、少なくとも実損額の倍は弁済すべきだろう。

表には出てこない中小企業いじめの実態

 まあ、こうした例はそう滅多にはないが、中小企業が大企業に不当な条件を押しつけられている例は枚挙にいとまがない。

 例えば、私の友人が多くいる金型業界の場合、ほとんど、何の契約もないまま、金型製造に着手することが多い。手直しをして、改良をして、やっと検収が終わると、「検収後2カ月末日締め。支払いは120日手形」などという支払い条件になる。つまり、着手からは最低で1年後、納品後からでも半年も代金を支払ってもらえない。

 最近はさらに悪質になって、「手形を発行すると手数料がかかるから」という理由で手形も出さない。「検収後2カ月末日締め。口約束のまま4カ月後に現金払い」という例も出てきたという。手形をもらえないので、現金化することもできない。当然資金繰りは苦しい。

 日本を代表するような大手金型メーカーや、世界中の自動車のボディー金型をつくっているような会社が外資に身売りを余儀なくされたのも、金型の製造着手から代金支払いまでの期間が2~3年にもなるため(ボディー金型は大きいから特に長くなる)、資金負担に耐え切れなくなったためだと言われている。

 あるいは、出来上がった金型に、後出しで高性能を要求し、つべこべ文句を言って、金型を既に生産に使っているのに、検収をずるずる半年も引き延ばすこともあるという(結局、金型企業は製品納品後、12カ月間も支払ってもらえない!)。

 あるいは、「納品後に値下げを強要される」「代金を決めないまま仕事をさせられ、納品してから不当に低い代金を提示される」等々、不当な条件で仕事をさせられていることがままある。

 このようなひどい話は、工場見学に行って雑談をしている時、あるいは会合の後の2次会で酒を飲みながら話していると、いろいろな社長の口から流れるように出てくる。だが、お役所(例えば中小企業庁、公正取引委員会)が正式なアンケート調査をすると、とたんに中小企業は貝のように口を閉ざしてしまう。

 それというのも、ヤリ玉に挙がった悪質な企業に限って「バラした下請けは誰だ」と調べ回り、ネタ元(?)は必ずや徹底していじめられ、多くの場合二度と仕事が回ってこないからだ。

 「正義の味方」は私の柄には合わないが、今後もひどい実例を紹介しよう。