本記事は3月18日付フィスコ企業調査レポート(伊藤忠エネクス)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 浅川 裕之
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エネルギー関連のM&A・事業提携等で更なる収益拡大目指す
伊藤忠エネクス<8133>は伊藤忠商事<8001>グループ内でエネルギー分野の中核を担う、エネルギー商社。産業向け燃料販売から最終消費者向けのガソリン、LPガス、各種機器類の販売まで、エネルギーをキーワードに幅広く事業を展開している。
伊藤忠エネクスの収益構造は原油価格の変動の影響を受けるものが多いが、その方向性については様々だ。原油価格の上下動のどちらが同社にとってメリットがあるのかを単純に断言することはできない。その時の原油価格の水準や変動幅、スピードなどによって、影響の出方が変わってくるためだ。2014年後半に見られた原油価格の急激な下落は、一部ではプラス面効果ももたらしたが総体的には同社の業績にはマイナスに作用したものと弊社では考えている。
2015年3月期の第3四半期決算は、上記の原油価格急落の影響を吸収して営業増益を達成した。税引前利益以下は減益となったが、これは2014年3月期にあった有価証券売却益がなくなったことによるものである。同社の事業には第4四半期(1月−3月期)の収益の比重が大きいものも多いため、そうした季節性を考慮すればこれまでのところは順調な進捗と評価できる内容と言える。ただし、国際原油価格はまだ不安定な状況にあり、2015年3月期業績についても楽観はできない状況だ。
同社が中期成長のエンジンと期待する事業は多いが、それらは全般には順調に進捗している模様だ。カーライフ事業では「リバイバルプラン」から「マスタープラン」へとギアを1段上げた。具体例としては人事・組織を見直して、シナジー効果実現に向けた強化策を行った。また、電力発電事業では2014年来の新設計画が順調に進んでいるほか、他社との事業提携・合弁案件も水面下では着実に進展している模様だ。同社のDNAとも言えるM&Aや事業提携などを通じて今後も積極的に収益拡大を目指すことが期待される。
Check Point
●第3四半期は減収ながら営業増益、全体的には計画どおりの進捗
●2015年3月通期は会社予想どおりに落ち着く可能性大
●カーライフ事業では車関連事業の新たなシナジー効果の実現に挑む
会社概要
M&A、事業提携などの「攻めの経営」で事業構造を大きく変革
同社は2001年に現社名に変更されるまでは伊藤忠燃料(株)の社名で、石油製品流通業界で大きな存在感を見せていた。2000年代に入ってからは社名だけでなく事業構造においても大きな変革を推進してきた。その変革の原動力はM&Aである。M&Aは今では同社のDNAとも言えるほどにすべての事業分野において様々な規模のものが実行されてきた。同社の成長の歴史はM&Aの歴史でもある。M&Aには当然リスクが伴う。積極的なリスクを取りながら大手エネルギー商社としての長年の知識と経験を活かして、巧みに数々のM&Aを成功へと導いてきたところに、同社の「攻めの経営」の真価があると言える。また、事業提携・合弁会社設立もM&A同様に「攻めの経営」を実現する有効な方策であり、同社はこれらの手法を使い分けながら持続的発展を図っていく方針だ。