オランダ人は一般的に動物好きな人が多い。国民の3人に1人は犬やネコを筆頭に、鳥類や爬虫類、魚類から、ちょっと変わったところではミニブタまで、何かしらペットを飼っている。
彼らは、こうした動物たちをやみくもに猫かわいがりする対象としてではなく、れっきとした家族の一員と見なし、深い愛情を注ぎながら責任を持って飼育することに使命を感じているようだ。
犬を飼うときはペットショップでなく保護収容施設に
愛犬家を自称する人たちには、この傾向が特に強い。彼らの犬たちは、家の中で生活するのはもちろん、可能な限り飼い主と行動を共にする。
許可さえあれば、勤務先に同伴することを許されている犬もいる。こうして惜しみなく愛し、しつけを徹底して行なえば、犬と人間は理想的な関係が築けると彼らは断言する。
それでは、オランダ人が犬を飼おう、と思ったときにはどうするか。まず彼らは犬を「買う」のではなく、「飼う」ために各自治体が運営する保護収容施設に出向き、里親になることを考える。
こういった施設に収容されているのは、飼い主がやむを得ず手放した成犬や子犬たちで、国内からはもちろん、遠くは東欧や南欧の保護収容施設から送られてきた犬たちも多い。
気に入った犬が見つかり、引き取りたいと申し出た場合、収容施設側はまず、受け入れ側の住宅環境や飼育経験の有無などを徹底的に事前調査する。調査結果でOKが出された場合に限り、手数料100ユーロ(日本円にして約1万4000円)を払い、晴れてその犬の飼い主になることができる。
譲与後も、施設員は犬が適切な飼育下にあるか否かを不意打ちで調査しにやってくる権限を有しており、アフターケアの面でも完璧に近いといえよう。
ちなみに、こうした収容施設は里親が現れるまでの仮宿であり、不運にも生涯を保護収容施設で過ごすことになる犬ももちろんいるが、これら保護収容施設内に持ち込まれた犬は、理由なく殺処分されることはまずない*注1。
*編集部注 以下4カ所の訂正・加筆に沿って、当初「野良犬も野良猫もいない国」としていたタイトルを、より内容を反映したものに変更いたしました(2015年1月16日)。注1)当初「殺処分されることは決してない」と記述されていましたが、犬種により殺処分される事実があるとのご指摘があり、筆者に確認のうえ表現が不正確であったと判断いたしました。以上、訂正してお詫びいたします。