まだ10月というのに、モスクワは気温マイナス11度と例年になく冬の訪れが早い。ショッピング・センターやスーパーマーケットをのぞいてみると、さすがに平日は人影もまばら(以前は平日でもそれなりの人出があった)で、テナントが撤退してシャッターが下りたままの店舗もちらほら散見された。

ペットボトル入り飲料水の価格が3割以上アップ

スケルトン状態で販売されるロシアのマンション

 もっとも、週末となればクリミア問題勃発前と同様のにぎわいであるし、スーパーマーケットの棚も欧米からの食品輸入禁輸にもかかわらず、禁輸措置前と遠目には大差ないように見える。

 しかし近づいてラベルをよく見ると、輸入先がスイス、セルビア、マケドニア、トルコ、南アフリカ、アルゼンチン、中国など、1年前にはあまり馴染みのなかった国々からの食品に置き換わっている。

 ロシアにしては驚異的に迅速な対応である。

 商品の価格はどうだろうか。生鮮食品は同一商品でないと比較のしようがないのだが、例えばいつも買っている国産ミネラルウォーターのボトルが以前は60ルーブルであったのが、80ルーブルに値上がりしていた。

 輸入品でもないミネラルウォーターの価格が3割以上値上がりしたのを見ると、ロシア人でなくとも経済の先行きに不安を感じる。

 ところが、こうした先行き経済不安を感じさせない場所がモスクワ郊外の至る所に存在する。新築マンション建設現場である。

 モスクワは人口1500万人、クレムリンを中心に放射線状と同心円状の幹線道路が広がる。一番外周の幹線道路はMKADと呼ばれ、半径は約15キロ、東京で言えばちょうど環八(環状八号線)に相当する。

 以前は基本的にMKADの内側がモスクワ市、外側がモスクワ州であったが、モスクワ市の拡大に伴って、MKADの外側にもモスクワ市の新行政区が拡大している。

 このMKADをぐるりと1週すると(約100キロ、渋滞がなければ1時間である)、おびただしい数の新築マンション建設現場を目にすることができる。これらの地域はモスクワ地下鉄の終点、あるいは終点からバスやトローリーを乗り継いでアクセス可能な地域である。モスクワのセンターまでは1時間程度であろうか。