本記事は8月29日付フィスコ企業調査レポート(ラクオリア創薬)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 
浅川 裕之
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産学連携による研究基盤の拡充で研究の幅を広げる

 ラクオリア創薬はファイザー日本法人の中央研究所がファイザーから分離独立してできた、「創薬開発型」バイオベンチャー。ファイザーから引き継いだ豊富な創薬インフラと、イオンチャネル創薬技術などの強みを活かして、消化器疾患の領域で充実したポートフォリオを有しているほか、疼痛領域でも研究開発が進展中である。イオンチャネル創薬は難易度が高い代わりに革新的な創薬が期待される分野であり、同社は複数の製薬企業と共同研究契約を締結し、化合物の探索を行っている。

 足元の研究開発活動は、同社と導出先の製薬企業においても、順調に進捗しているようだ。2014年12月期上期においては4つのメジャーな進捗が確認された。同社は、従来から注力してきた消化器疾患及び疼痛の領域の研究開発が順調に進んでいること、また産学連携による研究基盤のさらなる拡充を受けて、がん・免疫疾患の領域、さらには移植・再生医療への関わりなど研究の幅を一層広げていく方針である。その好例が、5月に発表された同社と京都大学iPS細胞研究所及びiPSアカデミアジャパンとの共同研究契約だ。同社はiPS細胞から免疫細胞への分化・増殖を誘導する化合物の探索を担うことになる。これ以外にも既に同定済みの化合物について、子会社の(株)AskAtを通じて、がん・免疫疾患領域に関する共同研究などを行っている。

 中期経営計画の骨子や、業績計画については現状では変更はない。2016年12月期に最初のロイヤリティ収入が期待され、2017年12月期以降から業績の安定期へとステージが変わっていくという中長期のシナリオを見込んでいる。そこに至るまでの資金手当ても、今期分はほぼめどがついている状況だ。今後、創薬開発の各プログラムについてステージが順調にアップしていくことで、創薬開発活動と資金調達活動がポジティブ・スパイラルを形成していくことが期待される。

Check Point

●新薬の種を創出しライセンスアウトで収益を上げるビジネスモデル
●ライセンスアウト済みプログラムのうち4項目で主要な進捗
●中期経営計画は全般的に順調な進捗を確認

会社概要

前身は世界的医薬品大手ファイザー日本法人の中央研究所

(1)沿革

 同社の前身は世界的医薬品大手である米ファイザーの日本法人の中央研究所だ。同研究所はファイザーの探索研究拠点として、「疼痛」「消化器疾患」の領域を中核に創薬研究を行ってきたが、2007年に閉鎖が決定された。

 閉鎖の決定を受けて当時の所長及び一部の従業員がEBO(エンプロイー・バイ・アウト:従業員による買収)による独立及び創薬事業の継続を決意し、同社が誕生した。会社設立は2008年2月で、同年7月に人的・物的資産、研究開発ポートフォリオ、及びその他を継承して事業がスタートした。証券市場には、2011年7月に大阪証券取引所(現東京証券取引所)JASDAQ市場グロースに上場した。