(米「パシフィックフォーラム CSIS」ニュースレター、2014年45号)

By Mendee Jargalsaikhan

 「カーン・クエスト」(米・モンゴル共催多国間共同訓練)は、当初は沖縄のアメリカ海兵隊やアメリカ国防省からはっきりした反応をもらえず、質素に始まった小規模な2カ国間演習であった。だが、それ以来10年以上も続けられ、現在は米軍とモンゴル軍によるモンゴル外交の討議の場であり、複雑な近隣地域における独特な平和維持訓練行事となっている。

 モンゴル人は、モンゴル軍の国際平和維持活動への貢献を促進し、また旧ソ連の訓練基地(ファイブヒル)を地域の平和維持訓練センターへ転用させることを進めるため、2カ国間演習の実施を熱心に要請した。その結果、アメリカ国務省はファイブヒル訓練基地で軍事援助を提供することを検討し、アメリカ海兵隊がモンゴル軍と小規模訓練を実施することを許可したのである。

 この取り組みが正しかったことは、イラン・アフガニスタンでのアメリカ主導の合同作戦やシエラレオネやチャド、南スーダンでの国連の平和維持活動(PKO)へのモンゴルの貢献などによって明らかになった。

 10年を経て、今やモンゴルはその専門知識や技術をアメリカと共有することが可能になった。モンゴルの人口や経済、軍事事情を考えれば、その貢献度は北東アジアや中央アジアで最大だとも言える。このことは、カーン・クエストや、最新の技術を備えたファイブヒル訓練基地が、アメリカとモンゴルとの軍事協力の成功の証しであることを物語っている。

広がるカーン・クエストの参加国

 しかしながら、モンゴルの近隣国はカーン・クエストに対して好意的だとは言えない。中国人民解放軍の指導者や調査員たちは、モンゴルがアメリカやインドとの軍事交流(特に両国が毎年行っているモンゴルでの軍事訓練)を増やしていることについて不満を述べている。

 2013年、人民解放軍はカーン・クエストのオブザーバー武官を、在モンゴル駐在武官から8名のオブザーバー武官に増員した。ロシアは、モンゴル軍の軍備のメンテナンスからテロ対策における相互運用性の改善までを目的に毎年2カ国間演習を開き、多くの資源を投入している。その一方で、中国と同様に駐在武官レベルでカーン・クエストのオブザーバーとしての地位を保持している。