4月9日、インドネシアで総選挙が行われ、メガワティ・スカルノプトリ元大統領率いる最大野党、闘争民主党が第1党へと躍進した。
7月に行われる大統領選では、その候補者ジョコ・ヴィドド・ジャカルタ特別州知事が最有力と伝えられているが、対抗馬と目されているのが、プロボウォ・スビアント元陸軍戦略予備軍司令官。かつてスハルト元大統領の娘婿という立場でキャリアを重ねてきた人物である。
今も2巨頭の影の中にい続けるインドネシア
メガワティ元大統領はスカルノ元大統領の娘だし、今回第2党となったゴルカル党もスハルト元大統領系の政党だから、世界第4の人口と最大のムスリム人口を擁する大国は、その伝統「KKN」(汚職、癒着、縁故主義の頭文字をとったもの)とともに、今も2巨頭の影の中にいるようだ。
先週末から劇場公開中の『アクト・オブ・キリング』(2012)は、そんなスカルノからスハルトへと実権が移りつつある頃のインドネシアで起きた「虐殺」で、実行部隊となった民兵「英雄」の「アクト・オブ・キリング」を追ったドキュメンタリー映画。
ここで言う「アクト」とは「行為」であり「演技」でもある。「アクト・オブ・キリング」を実行した本人自らカメラの前でその「行為」を再び「演技」するのである。
フィクション、ノンフィクションの枠を超え、2013年のベスト映画に選出する評論家やメディアも少なくない異色作である。
とはいえ、今一つピンと来ないのは、その「虐殺」がこれまであまり語られてこなかったからである。
インドネシアは、たまたまオランダ領となった地がひとまとめとなり独立した国だから、民族も言語も文化も極めて多様。
「建国の父」スカルノは、「NASAKOM」(「ナショナリズム」「宗教」「共産主義」の頭文字をとったもの)なるスローガンのもと、挙国一致の連立内閣を組んだ。
しかし、議会制民主主義はまるで機能せず、やがて「指導される民主主義」を掲げ、1963年には終身大統領となる。